名古屋大学大学院医学系研究科呼吸器内科学(石井誠 教授)の e-mask 開発実装研究チーム(名古屋大学医学部附属病院呼吸器内科の伊藤貴康 救急助教、岡地祥太郎 病院助教、呼吸器内科学・名古屋大学高等研究院(JST 創発的研究支援事業 1 期生・B3 ユニットフロンティア長)の佐藤和秀特任講師)らは With/ Post コロナでの新しい内視鏡検査スタイルを提案する新規医療デバイスである e-mask の飛沫飛散リスク低減効果と患者への安全性を実証しました。
伊藤 救急助教(筆頭著者)、岡地 病院助教(共同筆頭著者)、佐藤 特任講師(責任著者)、名古屋大学大学院医学系研究科呼吸器内科学の安井裕智 大学院生(現豊橋市民病院呼吸器内科)、同呼吸器外科学の芳川豊史教授、名古屋大学医学部附属病院先端医療開発部の安藤昌彦病院教授、世界気管支鏡学会理事長・松波総合病院呼吸器内科の坂英雄部長らの研究グループは、気管支鏡 ※1 の際に患者が装着することにより検査時の飛沫拡散を防止するマスクの共同開発を愛知県名古屋市のマスクメーカーとの産学連携事業として成功し、e-mask の実装化を可能としました。e-mask はサージカルマスクの折り目を工夫し、内視鏡と吸引用チューブを通す切れ込みが設けられています。また、本マスクは 2021 年 11 月から日本国内にて市販化されており、開発実装は「内閣府第 4 回日本オープンイノベーション大賞・厚生労働大臣賞(2022 年 2 月)」を受賞しております。
e-mask での飛沫予防効果を検証するために、微粒子高感度可視化実験による評価を実施し、本マスクの装着により明らかに飛沫の拡散が減っていることを確認しました。実臨床への応用を目的に臨床研究を行い、本マスク装着下での気管支鏡検査の安全性を確認しました。日常生活でよく使われる不織布のサージカルマスクをもとに設計しており、使い捨て、低コスト、大量生産が可能であります。これにより内視鏡検査室等での飛沫飛散リスクの減少につながり、本マスクにより検査に従事する医療従事者はもちろん、検査を受ける患者様へのリスク低減にもつながり、With/post コロナでの安全な内視鏡検査スタイルの確立が期待されます。
本研究は、Yahoo!基金、文部科学省研究大学強化促進事業 B3 ユニット名古屋大学総長経費、令和2年度国立大学イノベーション創出環境強化事業等のサポートを受けて実施され、「Respirology」(2022 年 7 月 4 日(オーストラリア西部時間))に掲載されました。
○ 内視鏡検査時の飛沫拡散を防止するマスク「e-mask」を開発し販売実装に成功した。
○ 飛沫可視化実験・シミュレーション技術により、本マスクによる飛沫防止効果を確認した。
○ 臨床研究にて安全性を確認し、本マスクが臨床上安全に使用可能であることを確認した。
○ 本マスクはサージカルマスクをもとに設計しており、低コストで日常診療に使用が可能であるデバイスを実装した。
○ 本マスクにより、内視鏡検査時の飛沫飛散リスクを低減し、With/post コロナでの安全な内視鏡検査スタイルの確立が期待される。
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※1 気管支鏡:
直径 3~6mm 程度の細くて柔らかいカメラで,胸の奥深くにある肺につながる気管・気管支の中をのぞき見る器械です。胃カメラと同じ構造ですが,胃カメラと比べると大変細くできています。気管・気管支や肺など呼吸器の病気にかかった患者さんにとって重要な器械で,気管・気管支内を観察すると共に、組織や細胞を採取して正確な診断をつけたり(気管支鏡検査)、気管・気管支が狭くなる病気などを治療したりする(気管支鏡下治療)場合に用いられます。
掲雑誌名:Respirology
論文タイトル:Prevention of droplet dispersal with “e-mask”; a new daily use endoscopic mask during bronchoscopy
著者:Takayasu Ito 1*, Shotaro Okachi 1*, Kazuhide Sato #,1,2,3, Hirotoshi Yasui 1, Noriaki Fukatsu 2, Masahiko Ando 4, Toyofumi Fengshi Chen-Yoshikawa 5, Hideo Saka 6
*These authors are equally contributed to this work.
# Corresponding Author
所属名:
1 Department of Respiratory Medicine, Nagoya University Graduate School of Medicine
2 Nagoya University Institute for Advanced Research, Advanced Analytical and Diagnostic Imaging Center (AADIC)/Medical Engineering Unit (MEU), B3 Unit
3 FOREST-Souhatsu, CREST, JST
4 Center for Advanced Medicine and Clinical Research, Nagoya University Hospital
5 Department of Thoracic Surgery, Nagoya University Graduate School of Medicine
6 Department of Respiratory Medicine, Matsunami General Hospital
DOI:10.1111/resp.14321
English ver.
https://www.med.nagoya-u.ac.jp/medical_E/research/pdf/Res_220704en.pdf
大学院医学系研究科/高等研究院 佐藤 和秀 特任講師
https://www.med.nagoya-u.ac.jp/medical_J/laboratory/clinical-med/internal-med/respiratory-med/