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生物学

2022.07.20

細胞と細胞をつなぐ分子の結合過程の撮影に成功 ー高速原子間力顕微鏡で明らかになった細胞間接着タンパク質の段階的な結合プロセスー

国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学理学研究科/ExCELLSの内橋貴之教授と、大学共同利用機関法人自然科学研究機構 生命創成探究センター (ExCELLS) の西口茂孝特任研究員のグループは、国立大学法人東京工業大学生命理工学院生命理工学系の古田忠臣助教と共同で、細胞と細胞をつなぐ細胞間接着タンパク質であるカドヘリンの結合過程を、ナノメートル (100万分の1ミリメートル) のスケールでリアルタイムに可視化することに世界で初めて成功しました。研究グループは、高速原子間力顕微鏡を用いて、2つのカドヘリン分子間の既知の結合構造を同定すると共に、新規の結合構造を発見し、それらの結合構造間の構造変換の過程を明らかにしました。カドヘリンを介した細胞間接着は、私たちのからだの形作りやがん細胞の浸潤等、様々な現象に重要であることから、カドヘリンの結合メカニズムを明らかにすることで、形態形成や疾患発症の原理解明につながることが期待されます。

本研究成果は、国際科学雑誌 「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America (米国科学アカデミー紀要)」 (米国東部時間2022年7月18日の週) に掲載されました。

 

【ポイント】

1. 細胞と細胞をつなぐ細胞間接着タンパク質 (カドヘリン) の溶液中での結合過程を世界で初めて観察した。
2. 高速原子間力顕微鏡を用いて、カドヘリンが既知のXダイマーとストランドスワップダイマー、および新規のS形状ダイマーの3種類の結合構造の二量体を形成していることを発見し、これらの結合構造間の遷移過程を明らかにした。
3. カドヘリンの結合メカニズムを明らかにすることで、形態形成や細胞間接着に関連した疾患発症の原理解明に繋がることが期待される。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【論文情報】

雑誌名: Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
論文名: Multiple dimeric structures and strand-swap dimerization of E-cadherin in solution visualized by high-speed atomic force microscopy
著者: Shigetaka Nishiguchi*, Tadaomi Furuta, Takayuki Uchihashi* (*責任著者)
DOI: 10.1073/pnas.2208067119

 

【研究代表者】

https://www.nagoya-d-lab.com/