TOP   >   工学   >   記事詳細

工学

2022.07.20

電力パケット型エネルギーインターネットの新制御技術を開発 ~必要なときに必要なだけ供給可能、実用化の加速に期待~

国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学大学院工学研究科の東 俊一 教授、岩田 拓海 博士後期課程学生らのグループは、電力パケット型注1)エネルギーインターネット注2)のもとで動作するシステム制御技術の開発に成功しました。
近年、エネルギー流通のためのインターネットである「エネルギーインターネット」という新しい技術が注目を集めています。しかし、電力パケット型と呼ばれる方式のエネルギーインターネットに、モータ駆動系などの制御システムを端末として接続するためには、制御システム側に蓄電池やキャパシタといった電力平滑化のためのデバイスを備える必要がありました。しかし、そのような追加デバイスはシステムを複雑にするため実用上望ましくはありません。本研究では、必要なときに必要な電力パケットを調達して制御する「最大休止制御」という方法を開発しました。これにより、電力平滑化(時間的に不連続なエネルギー供給を連続化する)のためのデバイスを使うことなく制御をすることが可能になりました。この成果により、電力パケット型のエネルギーインターネットの実用化が加速することが期待されます。
本研究成果は、2022年7月18日付「International Journal of Robust and Nonlinear Control」のオンライン版に掲載されました。
本研究は、2021年度から始まったJST創発的研究支援事業JPMJFR2123および科学研究費基盤研究(A)21H04558の支援のもとで行われたものです。

 

【ポイント】

・近年、エネルギーに対してもインターネットのような流通システムを作って、エネルギー供給を行う「エネルギーインターネット」という新しいコンセプトが注目を集めている。
・エネルギーインターネットの一つの方式として電力パケット型があるが、従来の制御技術を適用するためには、制御システム側に蓄電池やキャパシタといった電力平滑化のためのデバイスを備える必要であった。
・本研究では、複数のアクチュエータを有するシステムにおいて、必要なときに必要な電力パケットを調達して制御する「最大休止制御」方法を開発した。これにより、電力平滑化のためのデバイスを使うことなく制御をすることが可能になった。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【用語説明】

注1)電力パケット型:
情報通信におけるTCP/IPでは、情報をある大きさに分割し、そこに宛先などが記されたタグを付加して、パケットと呼ばれる情報伝送の単位を作る。電力パケット型は、これと同様の考え方で、ある時間幅の電力パルスに情報タグを付加した「電力パケット」と呼ばれる単位を作り、ネットワーク上で流通させる。

 

注2)エネルギーインターネット:
情報のインターネットに着想を得たエネルギー流通のためのインターネットのこと。需要家と供給家の組み合わせがこれまで以上に自由なり、さまざまなサービスが展開されることが期待される。

 
注3)ブロックスパースな入力ベクトル:
非零要素が少なく、また、非零要素があるとすれば固まって出現するベクトルのこと。

 

【論文情報】

雑誌名:International Journal of Robust and Nonlinear Control
論文タイトル:Maximum Turn-off Control for Discrete-time Linear Systems
著者:Takumi Iwata,Shun-ichi Azuma, Ryo Ariizumi, Toru Asai 
DOI:10.1002/rnc.6283
URL:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/rnc.6283
 

【研究代表者】

大学院工学研究科 東 俊一 教授
http://www.ctrl.mae.nagoya-u.ac.jp/