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人文学

2022.08.23

縄文時代の沖縄でのブタ飼育は、文化として地域に根付き、継続的に行われていた

国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学博物館・大学院情報学研究科の新美 倫子 准教授は、沖縄県立埋蔵文化財センターの玉城 綾氏との共同研究で、沖縄の縄文時代遺跡である新城下原第二遺跡(沖縄県宜野湾市・北谷町)から出土した約6900年前のイノシシ類が、下顎骨に見られる家畜化現象注1)から、イノシシではなくブタであることを確認しました。また、下顎骨を用いた年齢査定により、高齢個体が生存していることが判明し、野生ではなく、人間がブタを飼育していたことが分かりました
すでに、当遺跡の近隣にあり、数百年の時代差がある遺跡、野国貝塚(沖縄県嘉手納町)において、縄文時代にブタ飼育が行われていたことを明らかにしましたが(2021年)、ブタ飼育が、一遺跡のみに限られたできごとだったのか、継続して広く地域で行われる文化だったのかは分かっていませんでした
本研究では、新城下原第二遺跡と野国貝塚のブタ飼育パターンが共通していることが分かり、同一地域にあり、少し時代が異なる二つの遺跡において、同じパターンのブタ飼育が行われていたことから、ブタ飼育が、縄文時代早期~前期の当地域で文化として共有され、継続的に運用されていたと考えることができます
この研究成果は、2022年7月24日付沖縄動物考古学会の学術雑誌「南島考古」41号に掲載されました。

 

【ポイント】

・新城下原(あらぐすくしちゃばる)第二遺跡(沖縄県宜野湾市・北谷町)で、6900年前(縄文時代前期)にブタが飼育されていたことが明らかになった。
・すでに、近隣にある野国貝塚(沖縄県嘉手納町)において、7200年前(縄文時代早期)にブタが飼育されていたことは分かっていたが、今回、両遺跡で行われていたブタ飼育のパターンが共通していることが分かった。
・近隣にある少し時代が異なる遺跡において同じパターンのブタ飼育が行われていたことにより、ブタ飼育が、縄文時代早期~前期のこの地域で文化として共有され、継続的に運用されていたと考えることができる。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【用語説明】

注1)家畜化現象:
野生のイノシシからブタへの家畜化の過程で起きるさまざまな変化。この過程において骨に起きる変化には、下顎骨の前面が凹む以外にも、頭蓋骨の額と鼻の境目に段ができる、涙骨(眼窩の前にある骨)が短くなる、骨そのものが肥大する等があり、これらを利用して、遺跡から出土する野生イノシシとブタを見分けることができる。

 

【論文情報】

雑誌名:南島考古41号
論文タイトル:新城下原(あらぐすくしちゃばる)第二遺跡出土のイノシシもブタなのか?―縄文時代早~前期の沖縄型ブタ飼育パターンー
著者:新美倫子(名古屋大学)・玉城綾(沖縄県立埋蔵文化財センター)

 

【研究代表者】

名古屋大学博物館/大学院情報学研究科 新美 倫子 准教授
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