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生物学

2022.08.25

群れる?群れない? ~個体の意思決定が群れの"密"さを決める~

国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学大学院理研究科の白崎 莉玖 博士前期課程学生、田中 良弥 助教、石川 由希 講師、上川内 あづさ 教授らの研究グループは、琉球大学と東京大学との共同研究で、ショウジョウバエ2種の群れ注1)の性質に大きな違いがあることを発見しました。さらに、群れを作る過程での個体レベルの意思決定注2)が種間で異なることを明らかにしました
「群れる」ことは多くの動物にみられる重要な生存戦略であり、群れの性質は種ごとに異なります。この群れの性質の種間差は、群れを構成する個体の意思決定と密接に関わることが予想されてきました。しかし、群れの性質に違いがある種間で、個体の意思決定がどのように異なるのかはこれまで理解が進んでいませんでした。
本研究では、群れの性質に関わる意思決定を調べるモデルとして、それぞれ“密”な群れと“疎”な群れを作る2種のショウジョウバエに着目しました。群れを形成する過程のハエの動きを比較することで、個体の意思決定の違いが、群れの性質の種間差を生み出している可能性を示しました
今後、分子・神経レベルの解析を進めることで、動物の群れの性質を多様化させる仕組みの解明につながることが期待されます。
本研究成果は、2022年8月24日付国際科学雑誌「Royal Society Open Science」に掲載されました。

 

【ポイント】

・ショウジョウバエ2種の群れの性質に大きな違いがあることを発見した。
・それぞれの種の個体レベルの意思決定の集積が群れの性質を生み出すことを示唆。
・「群れの性質」を制御する分子・神経機構の理解につながることが期待される。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【用語説明】

注1)群れ:
複数の動物個体が同じ空間内で互いに関わりを持ちながら集まる状態を示す。「群れる」ことは、捕食者の回避や採餌効率の上昇などの利益をもたらす一方で、資源競争や疫病の蔓延などのコストをもたらす。群れの性質の種ごとの違いは、こうした利益とコストのバランスによって決まると考えられている。

 

注2)意思決定:
動物が周囲のさまざまな環境情報に基づいて、複数の行動の選択肢から特定の行動を選択すること。

 

【論文情報】

雑誌名:Royal Society Open Science
論文タイトル:Distinct decision-making properties underlying the species specificity of group formation of flies
著者:Riku Shirasaki*, Ryoya Tanaka*, Hiroki Takekata, Takashi Shimada, Yuki Ishikawa‡ & Azusa Kamikouchi‡    
(*共同第一著者, ‡共同責任著者;下線:本学教員を示す) 
DOI:10.1098/rsos.220042
URL: https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rsos.220042

 

【研究代表者】

大学院理学研究科 上川内 あづさ 教授
https://www.bio.nagoya-u.ac.jp/~NC_home/index2.htm