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生物学

2022.10.25

ヒスチジンリン酸化の神経再生での役割を発見 ~ヒトの神経損傷治療法の開発促進への一歩に~

国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学大学院理学研究科の久本 直毅 教授、酒井 芳樹 博士後期課程学生らの研究グループは、動物ではわずかな種類のタンパク質にだけ起きるヒスチジンのリン酸化について、その役割のひとつが神経切断後の再生抑制であることを新たに発見しました。ヒトの神経損傷治療法の開発促進の足がかりの一つになることが期待されます。
生体内のタンパク質はさまざまなリン酸化を受けることが知られています。細菌や植物では、ヒスチジンをリン酸化されるタンパク質は数多く存在し、外界からのシグナルを細胞内で伝達する役割を担っています。一方、動物ではヒスチジンをリン酸化されるタンパク質はごくわずかであり、それが生体内でどのような役割を果たしているのか、あまり分かっていませんでした。
本研究では、線虫C.エレガンスをモデル動物とした解析により、GPB-1と呼ばれるタンパク質のヒスチジンリン酸化が神経切断後の再生を抑制しており、その抑制は神経切断後にヒスチジンが脱リン酸化酵素により脱リン酸化されることで解除されることを明らかにしました。
本研究成果は、2022年10月24日19時(日本時間)付ヨーロッパ科学雑誌「EMBO Reports」に掲載されました。

 

【ポイント】

・ヒスチジンリン酸化注1)の神経再生における役割を明らかにした。
・ヒスチジン注2)のリン酸化は神経再生を抑制しているが、神経切断により脱リン酸化注3)して抑制が解除される。
・ヒトの神経再生研究への寄与が期待される。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【用語説明】

注1)ヒスチジンリン酸化:
リン酸がタンパク質の中にあるヒスチジンに転移すること。

 
注2)ヒスチジン:
アミノ酸の一種。タンパク質の構成要素。

 

注3)脱リン酸化:
リン酸がアミノ酸等から外れること。

 

【論文情報】

雑誌名:EMBO Reports
論文タイトル:Histidine dephosphorylation of the G? protein GPB-1 promotes axon regeneration in C. elegans
著者:酒井芳樹、花房洋、久本直毅、松本邦弘 (全て名古屋大学大学院理学研究科)        
DOI:10.15252/embr.202255076
URL: https://www.embopress.org/doi/full/10.15252/embr.202255076

 

【研究代表者】

大学院理学研究科 久本 直毅 教授
https://sites.google.com/view/nagoyamb6