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環境学

2022.11.25

温暖化する北極海から大陸に向かう水蒸気量の増加を発見 ~北極の温暖化に伴う中・高緯度の気候変動や水循環過程の理解向上に寄与~

国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学宇宙地球環境研究所の檜山哲哉教授と北海道大学大学院地球環境科学研究院・同大学北極域研究センターの佐藤友徳准教授、中村 哲博士研究員(研究当時、現・気象庁大気海洋部)、三重大学大学院生物資源学研究科の飯島慈裕教授の研究グループは、海氷面積の縮小や海水温の上昇など、近年急速に温暖化が進行する北極海周辺における大気中の水蒸気の流れを解析し、北極海から蒸発した水蒸気がユーラシア大陸や北米大陸に向かって近年多く輸送されていることを解明しました。
北極域では地球全体の平均に比べて早いペースでの温暖化が進行しており、この傾向は今後も継続することが予測されています。このような北極の温暖化は様々な環境変化を誘発することが懸念されています。研究グループは特定の地域から蒸発した水蒸気の、大気中における動きを追跡できる数値計算手法を用いて、北極海から蒸発した水蒸気の輸送経路や輸送量を明らかにしました。
1981年から2019年までの期間について解析したところ、北極海を起源とする水蒸気の輸送が9月から12月にシベリア地域で増加していることが分かりました。このことはシベリアにおける地域的な積雪増加傾向とも整合的であり、北極海の海氷減少や水温上昇が、ユーラシア大陸や北米大陸の水循環や生態系にも影響を与えることを示唆する結果と言えます。
なお、本研究成果は、日本時間2022年11月24日(木)午後7時公開のnpj Climate and Atmospheric Science誌に掲載されました。

 

【ポイント】

・北極海から蒸発し、シベリアや北米大陸に輸送される水蒸気の量が近年増加していることを発見。
・晩秋から初冬における北極海起源の水蒸気輸送量の増加は、大陸の地域的な積雪増加傾向と整合的。
・北極海、大気、陸域の相互作用を介した北極域の気候変動メカニズムや水循環研究の進展に期待。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【論文情報】

論文名 Enhanced Arctic moisture transport toward Siberia in autumn revealed by tagged moisture transport model experiment(タグ付き水蒸気輸送モデルによって明らかにされた秋の北極起源水のシベリアへの輸送量の増加)
著者名 佐藤友徳1、2、中村 哲1(当時)、3、飯島慈裕4、檜山哲哉51北海道大学大学院地球環境科学研究院、2北海道大学北極域研究センター、3気象庁大気海洋部、4三重大学大学院生物資源学研究科、5名古屋大学宇宙地球環境研究所)
雑誌名 npj Climate and Atmospheric Science(気候科学及び大気科学の専門誌)
DOI 10.1038/s41612-022-00310-1
URL https://www.nature.com/articles/s41612-022-00310-1
公表日 日本時間2022年11月24日(木)午後7時(英国時間2022年11月24日(木)午前10時)(オンライン公開)

 

【研究代表者】

宇宙地球環境研究所 檜山 哲哉 教授
https://hydroclimatologylab.home.blog/