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生物学

2022.12.07

おしべとめしべの長さをそろえて自家受粉を成功させるための仕組みを発見

国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学遺伝子実験施設の打田 直行 教授らの研究グループは、植物がペプチドホルモンの働きにより、おしべとめしべの長さをそろえることで、自家受粉を成功させるための仕組みを新たに発見しました。
本研究成果は、植物の実りの元となる、自家受粉の失敗を防ぐ技術につながることが期待されます。
本研究成果は、2022年11月23日付イギリスの科学雑誌「Plant, Cell & Environment」のオンライン版に掲載されました。

 

【ポイント】

・1つの花の中のおしべとめしべで行う「自家受粉」により種子を作る植物は多く、植物の繁栄のためにも、安定的な農作物の供給のためにも、自家受粉を確実に成功させることは重要である。この自家受粉は、おしべとめしべの長さがそろうことで起こる。
・本研究では、3つのEPFL型と呼ばれるペプチドホルモン注1)が働くと、おしべがめしべと同じ長さまで伸び自家受粉に成功することを発見した。そのうちの1つEPFL6は、特に自家受粉が失敗しやすい低温下で、自家受粉を成功させる役割を持つことも判明した。
・ERECTAというタンパク質の働きを止めると、おしべとめしべが同程度に短くなることも見つけた。おしべとめしべの長さがそろわずに自家受粉に失敗する植物でも、ERECTAの働きを止めると、おしべとめしべが同程度に短くなり、自家受粉に成功した。
・本研究成果は、植物の実りの元となる、自家受粉の失敗を防ぐ技術につながると期待される。

 

◆詳細(プレスリリース本文)は こちら

 

【用語説明】

注1)ペプチドホルモン:
複数のアミノ酸が結合した比較的小さめのタンパク質のうち、細胞外に分泌されて標的となる細胞に作用し、特定の生理作用を引き起こすもの。植物のペプチドホルモンは、アミノ酸の並びによりいくつかのグループに分類されるが、そのうちの1つにEPFL型と呼ばれるグループがある。

 

【論文情報】

雑誌名:Plant, Cell & Environment
論文タイトル:EPFL peptide signaling ensures robust self-pollination success under cool temperature stress by aligning the length of the stamen and pistil.
著者:Satomi Negoro, Tomo Hirabayashi, Rie Iwasaki, Keiko U. Torii, and Naoyuki Uchida
DOI: 10.1111/pce.14498
URL: https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/pce.14498

 

【研究代表者】

遺伝子実験施設/大学院理学研究科 打田 直行 教授
https://www.bio.nagoya-u.ac.jp/laboratory/mc.html