TOP   >   工学   >   記事詳細

工学

2023.01.10

プラズマと半導体材料の相互作用を活用して高機能な発光デバイスを実現 ―核融合科学と光工学の分野融合、核融合技術を応用展開―

国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学の大野哲靖教授と、田中宏彦准教授は、自然科学研究機構 核融合科学研究所の上原日和助教、シーチュエンCOE研究員、安原亮准教授らの研究グループと、北海学園大学の藤原英樹教授、東京大学の梶田信教授と新たに研究チームを結成し、核融合研究で生まれ培われてきた、プラズマを材料に照射する技術を半導体の材料加工に応用し、従来に比べて大幅に工程数を削減できる新たな加工技術を提示しました。さらに、この新たな技術を用いて高機能な発光デバイスを開発しました。このデバイスは、ランダムレーザー※1と呼ばれる微小なレーザー光源で、イメージング装置やセンサーの部品に応用できます。研究チームは、これまで困難とされてきた、ランダムレーザーの発光特性の制御にも成功しました。核融合科学と光工学という異分野を融合することで生まれた本成果は、核融合技術の応用展開を牽引するものであり、今後、更なる発展が期待されます。

 
この研究成果をまとめた論文が米国化学会(ACS)の学術雑誌「ACS Applied Optical Materials」に2022年12月12日付けで掲載されました。
 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【用語解説】

※1 ランダムレーザー: 粉末や不規則な凹凸構造のような、無秩序なランダム構造を利用した発光デバイス。光が微粒子に散乱(多重散乱)されることで光の閉じ込めが起き、不規則な構造でもレーザー光を生み出すことができる。ランダムレーザーは、一般的なレーザーのような明るさ(高い輝度)と、白熱電球のような低い空間的コヒーレンスを兼ね備えている。

 

※  空間的コヒーレンス: 電磁波の一種である光は、波の性質を持っている。この波の位相の揃い具合のことをコヒーレンスといい、コヒーレンスが高いほど波同士の強め合いや打ち消し(干渉)が起こりやすい。一般的なレーザーの光は、時間的な(進行方向の)コヒーレンスが高く、ビームの横方向の位相関係を表す空間的コヒーレンスも高い。そのため、レーザーの光を物質に照射した場合、散乱光同士が容易に干渉し、強度ムラが生じてしまう。一方でランダムレーザーは、レーザーのような明るさを持ちながら、空間的コヒーレンスが低いため、強度ムラが生じず、全視野イメージング用の光源として有望視されている。

 

【論文情報】

雑誌名:ACS Applied Optical Materials
題名:Structural correlation of random lasing performance in plasma-induced surface-modified gallium nitride
(プラズマ照射による窒化ガリウム表面改質とそのランダムレーザー応用)
著者名:上原日和1、シーチュエン1、安原亮1、藤原英樹2、梶田信3、大野哲靖4、田中宏彦4
  1 自然科学研究機構 核融合科学研究所、2 北海学園大学、3 東京大学、4 名古屋大学

 

DOI:10.1021/acsaom.2c00085
URL: https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acsaom.2c00085

 

【研究代表者】

大学院工学研究科 大野 哲靖 教授
未来材料・システム研究所 田中 宏彦 准教授
http://www.nuee.nagoya-u.ac.jp/labs/plaene/j-index.html