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工学

2023.01.30

温めると縮む新材料「ピロリン酸亜鉛マグネシウム」の微粒子化に成功 ~電子デバイスの内部部材など微小部材の熱膨張制御に期待~

国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学大学院工学研究科の竹中 康司 教授、加納 雅人 博士前期課程学生、春日井 涼太 博士前期課程学生、同大学工学部の金森 達也 学部生は、株式会社ミサリオ(代表取締役・事業担当;山田 展也)と共同で、竹中教授らが2021年11月に発見した、環境にやさしい、温めると縮む新材料「ピロリン酸亜鉛マグネシウム」の微粒子化に成功しました。
熱膨張の制御はあらゆる分野で求められていますが、とりわけ、微細化、複雑化が進む電子デバイス分野では、構成する異種材料間の熱膨張差が深刻な問題となっています。それを克服するために樹脂フィルム、接着剤、基板等といった微小な部材の熱膨張制御が不可欠であり、熱膨張抑制剤をサブミクロンから1μm程度に微粒子化することが必要でした。
ピロリン酸亜鉛マグネシウムは、-10~80℃の温度域で-60ppm/℃に達する大きな負の線膨張係数を示すなど、室温域を中心に広い温度範囲で強力に熱膨張を抑制できます。これまでは、大学の実験室レベルで得られていた粒径10~50μm程度の粗粉末による評価結果に留まっていましたが、本研究により、大学内の粗粉末と同等性能を保持したまま、微粒子化することに成功しました。
本研究成果は、例えば電子デバイスの内部部材など、マイクロメートル(μm; ミクロン)レベルの微小部材や局所領域の熱膨張制御など、これまで難しかった分野の熱膨張制御を実現すると期待されます。
開発された微粒子は、PyroAdjuster(パイロアジャスター)注2)の商品名で、粒径1 μm程度のミクロンクラスの量産品が、名古屋大学発ベンチャーである(株)ミサリオより試験供給されます。さらに、粒径が1μmより小さいサブミクロンクラスの供給も視野に入っています。
本研究成果は、2023年2月1日より東京ビッグサイトで開催される展示会「nanotech2023」の科学技術振興機構(JST)ブース内において展示・発表されます。

 

【ポイント】

・名古屋大学発の新材料を名古屋大学発ベンチャー(株)ミサリオとの共同開発で微粒子化
・粒径1μm(μm; ミクロン)注1)レベルの微粒子としては最高性能の負熱膨張を実現
・これまで難しかった局所領域の熱膨張制御はじめ産業界の幅広い要請に対応可能
・(株)ミサリオより粒径1μm程度のミクロンクラスの量産品を試験供給

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【用語説明】

注1)マイクロメートル(μm; ミクロン):
1μm=100万分の1m

 

注2)PyroAdjuster(パイロアジャスター):
商標登録済(2022年8月)

 

【研究代表者】

大学院工学研究科 竹中 康司 教授
http://mag.nuap.nagoya-u.ac.jp/