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生物学

2023.04.12

交尾を継続するためのメカニズムを解明 ~動物の交尾姿勢を制御する分子・神経基盤の全貌理解に期待~

国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学大学院理学研究科の山ノ内 勇斗 博士前期課程学生、田中 良弥 助教、上川内 あづさ 教授らの研究グループは、機械刺激注3)を受容するチャネルであるPiezoが、ショウジョウバエのオスにおいて交尾中の姿勢制御に関与することを発見しました。さらに、Piezoを阻害することによるオスの交尾姿勢の不安定化が、繁殖能力の低下をもたらす可能性を示しました
本研究では、ショウジョウバエの機械受容チャネルをコードするpiezo遺伝子に着目しました。機械学習を用いて交尾を自動検出するシステムを新たに開発して、変異体の行動解析や発現神経細胞の活動操作を行いました。その結果、piezo遺伝子がその発現神経細胞を介して交尾姿勢の維持に関与しており、オスが配偶子を輸送するまで交尾を維持するのに重要であることを発見しました。本研究により、交尾中のオスが機械刺激受容を介して積極的に姿勢を維持することが、繁殖成功につながることが分かりました。今後、動物の交尾行動を制御する分子・神経機構の全貌の解明に繋がることが期待されます。
本研究成果は、2023年4月11日付国際科学雑誌「iScience」に掲載されました。

 

【ポイント】

・Piezo注1)の機能を阻害するとオスの交尾注2)姿勢が乱れ、産仔数が減少することが
分かった。
・機械学習を用いて、交尾を自動でリアルタイム検出するシステムを新たに開発した。
・新しい実験システムを用いて、交尾中のPiezo発現神経細胞の機能操作に成功した。
・動物において交尾維持を担う分子・神経機構の理解につながることが期待される。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【用語説明】

注1)Piezo:
機械刺激を受容するチャネル(機械刺激受容チャネル)の一つである。真核生物から植物、動物に至るまで生物において広く保存されている。

 

注2)交尾:
体内受精を行う動物において、オスからメスへと配偶子を受け渡すために、オスとメスの生殖器を結合する行動。

 

注3)機械刺激:
物理的な力や、力による変形などの刺激である。機械刺激によって受け取られる機械受容として,触覚や圧力などの体性感覚、聴覚、平衡感覚、張感覚など多岐に渡る。

 

【論文情報】

雑誌名:iScience
論文タイトル:Piezo-mediated mechanosensation contributes to stabilizing copulation posture and reproductive success in Drosophila males
著者:Hayato M Yamanouchi, Ryoya Tanaka‡ & Azusa Kamikouchi‡    
(‡共同責任著者;下線:本学教員を示す) 
DOI: https://doi.org/10.1016/j.isci.2023.106617
URL: https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2589004223006946?via%3Dihub

 

【研究代表者】

大学院理学研究科 上川内 あづさ 教授
https://www.bio.nagoya-u.ac.jp/~NC_home/index2.htm

 

【関連情報】

インタビュー記事「繁殖成功に必要なのは、交尾中の〇〇をキープすることだった」(名古屋大学研究フロントライン)