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化学

2023.05.12

名古屋大学と日本ゼオン、「強靭な官能性スチレン系熱可塑性エラストマーの開発」で2学会より受賞

国立大学法人東海国立大学機構名古屋大学(所在地:愛知県名古屋市千種区不老町、総長:杉山 直、以下「名古屋大学」) 大学院工学研究科の野呂 篤史 講師(未来社会創造機構 マテリアルイノベーション研究所及び脱炭素社会創造センター兼務)らの研究グループは、日本ゼオン株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長 田中 公章、 以下「日本ゼオン」)との共同研究で、日本ゼオンが上市している熱可塑性エラストマーQuintacⓇに対して化学修飾を施すことで、「強靭な官能性スチレン系熱可塑性エラストマー」を開発しています。特にイオン性官能基注1)を導入したものでは、引張強度、タフネス、耐衝撃性が、官能基未導入のものと比べて3倍以上の値を示すことが分かっています。この共同研究成果に対して、2報の査読付き論文を共同発表、さらに国内外で複数の特許が成立し、国際的な産業競争力も有していることから、今回、日本レオロジー学会(会長:酒井 啓司教授/東京大学)及び日本ゴム協会(会長:斎藤 拓教授/東京農工大学)からそれぞれ2022年度日本レオロジー学会技術賞及び第35回日本ゴム協会賞を共同受賞することになりました。それぞれの賞はレオロジーを含む技術(工学、工業化技術を含む)に関して特に顕著な業績のあった者に授与される賞、ゴム及びその周辺領域における科学・技術又はその産業分野の発展に寄与し、その業績が極めて顕著な者に授与される賞です。
なお、発表済みの本共同研究成果に関する査読付き論文は、
・査読付き論文1(https://doi.org/10.1021/acsomega.1c05609
・査読付き論文2(https://doi.org/10.1016/j.polymer.2021.123419
で、インターネットで公開されています。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら
 

 

【用語説明】

注1)イオン性官能基:
電荷を帯びた化学構造を持った基、原子団のこと。負に電荷を帯びたものは陰イオン性官能基、正に電荷を帯びたものは陽イオン性官能基。例えばカルボキシレート基-COO-、スルホネート基-SO3-。なお、陰イオンと陽イオンの間では比較的強いイオン(間)相互作用を生じることが知られている。

 

【受賞情報】

[1]受賞名:2022年度日本レオロジー学会技術賞
受賞業績題目:非共有結合性相互作用の導入によるスチレン系熱可塑性エラストマーの強靭化技術の開発 
受賞者:小田亮二(日本ゼオン)、野呂篤史(名古屋大学講師)、梶田貴都(名古屋大学研究員)、橋本貞治(日本ゼオン)   
授賞式の日程:2023年5月11日

 

[2]受賞名:第35回日本ゴム協会賞
受賞業績題目:強靭な官能性スチレン系熱可塑性エラストマーの研究開発
受賞者:野呂篤史(名古屋大学講師)、梶田貴都(名古屋大学研究員)、小田亮二(日本ゼオン)、橋本貞治(日本ゼオン)    
授賞式の日程:2023年5月30日

  

【研究代表者】

大学院工学研究科/未来社会創造機構 野呂 篤史 講師
https://phys-chem-polym.chembio.nagoya-u.ac.jp/member-noro.html