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化学

2023.07.27

生物に倣い角度依存性のないキラル円偏光構造色を示す球状コレステリック液晶粒子を開発 ~偽造防止用QRコードにも利用可能~

国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学大学院工学研究科の何 佳磊(ヒ ジャレイ)博士後期課程学生、竹岡 敬和 准教授らの研究グループは、生物も利用するコレステリック液晶(Cholesteric liquid crystal: CLC)を、マイクロメーターサイズで粒径の揃った球状の粒子に加工する方法を開発しました。球状に加工することで、コレステリック液晶から生じる円偏光性の構造色の角度依存性が軽減されます。球状CLCは、サイズを変えることで液晶のピッチが変化するため、そのサイズに応じて発色する色が変えられます。球状CLC粒子の円偏光性構造色と市販の顔料を組み合わせることで、特定の円偏光板の下でしか表示できない偽造防止用QRコードとなります。
本研究成果は、2023年7月9日付、Wileyから出版される「Advanced Optical Materials」に掲載されました。

 

【ポイント】

・角度依存性のないキラル円偏光構造色注1)を示す球状コレステリック液晶注2)粒子の開発
・偽造防止用QRコードにも利用可能な顔料に

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【用語説明】

注1)キラル円偏光構造色:
光の進行に従い電場ベクトルが進行方向に垂直な面内で回転する状態を円偏光と言う。電場ベクトルが右回転する場合を右円偏光、左回転する場合を左円偏光と呼ぶ。このような偏光が、キラルな分子の集合体によって生じうる。キラル分子が形成する集合体の構造によって、その際に観察される円偏光の波長が可視光領域にあれば、キラル円偏光構造色として観測される。

 

注2)コレステリック液晶(CLC):
コレステリック液晶は、ネマチック液晶のように、一つの面内で分子は一定方向に配向しているが、隣接する面内では分子配向軸にねじれがある。その結果、全体としては面の垂直軸の周りに配向方向が螺旋構造をとる。螺旋のピッチが可視光の波長と同程度の場合、コレステリック液晶の薄膜は可視光の特定の波長の光をブラッグ反射することで面偏光性の構造色を示す。コレステロールの誘導体がこのような液晶構造を取っていたことから、コレステリック構造と呼ばれる。
※ネマチック液晶:構成分子の配向構造を持つが、三次元的な位置秩序をもたない液晶

 

【論文情報】

雑誌名:Advanced Optical Materials
論文タイトル:Particle Size Controlled Chiral Structural Color of Monodisperse Cholesteric Liquid Crystals Particles
著者:Jialei He a,*, Sizhe Liu a, Guohao Gao a, Miki Sakai a, Mitsuo Hara a, Yuto Nakamura b, Hideo Kishida b, Takahiro Seki a, Yukikazu Takeokaa,*
a Department of Molecular & Macromolecular, Graduate School of Engineering, Nagoya University, Furo-cho, Chikusa-ku, Nagoya 464-8603, Japan
b Department of Applied Physics, Graduate School of Engineering, Nagoya University, Furo-cho, Chikusa-ku, Nagoya 464-8603, Japan        
DOI: 10.1002/adom.202300296
URL: https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/adom.202300296
*本学関係者

 

【研究代表者】

大学院工学研究科 何 佳磊、竹岡 敬和 准教授
https://ytakeoka.xcience.jp

 

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