TOP   >   社会科学   >   記事詳細

社会科学

2023.08.03

不思議な力、子どもにはどう見える?階層化社会が生まれる心理的起源 ~「超能力=偉い人」の認識は幼児期から~

国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学大学院情報学研究科の孟 憲巍(もう けんい)准教授らの研究グループは、日本女子大学の石井 辰典 准教授、早稲田大学の杉本 海里 日本学術振興会特別研究員、安田女子大学の中分 遥 講師、京都大学の森口 佑介 准教授、大阪大学の鹿子木 康弘 教授、早稲田大学の 渡邊 克巳 教授との共同研究で、超越的な能力と社会的優位性を結びつける傾向が幼児期に存在することを明らかにしました
古今東西、霊力などの超越的な能力を持つと思われる者が高い社会的地位を有する現象が普遍的に観察され、人間社会の階層化を解明する糸口とされてきました。しかし、この現象を成り立たせる人々の心理基盤やその出現時期は不明でした。
本研究では、超越的な能力と社会的優位性を結びつける傾向が、人間にできること・できないことを区別し始める5~6歳児に見られるかを実験的に検討しました。その結果、子どもたちは普通の人物と比べて、超越的な能力を持つ人物に対して驚きを示すだけではなく、社会的に優位であると判断することが示されました。この研究成果は、人類史上多くの社会において超越的な能力を持つとされる存在が 権威を持ってきたことや、現代社会においてもこの結び付きが根強く見られることの心理的基盤を理解する上で役立つものと期待されます。また、子どもが感じる「憧れ」と「社会的順位」の法則を見出すことで、より良い教育環境を構築することが期待されます。
本研究成果は、2023年7月29日付科学誌「Cognition」に掲載されました。

 

【ポイント】

・古今東西、超越的な能力を持つと思われる者が高い社会的地位を有してきた
・この「超越的=偉い」という現象を成立させる人々の心理基盤は不明であった
・本研究では、超越的な能力と社会的優位性を結びつける傾向が、人間にできること・
できないことを区別し始める5~6歳児に見られるかを実験的に検討した
・子どもは超越的な能力を持つ人物に驚きを示し、かつ社会的に優位と判断した
・本研究成果は、人間社会の階層化の解明に繋がると期待される

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【論文情報】

雑誌名:Cognition
論文タイトル:Children attribute higher social status to people who have extraordinary capabilities
著者:Xianwei Meng*, Tatsunori Ishii, Kairi Sugimoto, Yo Nakawake, Yusuke Moriguchi, Yasuhiro Kanakogi, Katsumi Watanabe
*名古屋大学

 

DOI: 10.1016/j.cognition.2023.105576                                   
URL: https://doi.org/10.1016/j.cognition.2023.105576  

 

【研究代表者】

大学院情報学研究科 孟 憲巍 准教授

https://pikachu1211.wixsite.com/xianwei-meng