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医歯薬学

2023.08.21

子どもの長時間のスクリーンタイムは自閉スペクトラム症の原因ではなく、早期特性の可能性であることが明らかに

名古屋大学医学部附属病院親と子どもの心療科の高橋長秀准教授、浜松医科大学子どものこころの発達研究センター・大阪大学大学院連合小児発達学研究科の土屋賢治特任教授のチームは、「浜松母と子の出生コホート研究(HBC Study)」の一環として、自閉スペクトラム症(ASD) ※2、注意欠如多動症(ADHD)※3 と関連する遺伝子の変化の程度(以下“ASD・ADHD の遺伝的リスク”=なりやすさ)と生後 18 ヶ月、32 ヶ月、40 ヶ月のお子さんのスクリーンタイムの関連を検討しました。
まず、生後 18 ヶ月から 40 ヶ月のお子さんのスクリーンタイムは、1 日 1 時間程度に留まるグループ(27.9%)、2 時間程度から徐々に増えていくグループ(19.0%)、1 日 3 時間ぐらい継続するグループ(20.3%)、初めからスクリーンタイムが 4 時間以上のグループ(32.8%)に分かれることが分かりました。
その上で、ASD・ADHD の遺伝的リスクが、それぞれのグループに属する可能性をどれだけ高めるかを解析すると、ASD の遺伝的リスクを有していると、同リスクのないお子さんに比べて約 1.5 倍 1 日 3 時間ぐらい継続するグループに、約 2.1 倍スクリーンタイムが 4 時間以上のグループに入りやすいことが分かりました。ADHD の遺伝的リスクの高いお子さんでは、スクリーンタイムが初めから長いわけではないものの、成長とともに徐々に長くなる傾向があることが分かりました。
これまでに、子どものスクリーンタイムが長いことが、ASD・ADHD の原因ではないかということが議論されてきましたが、本研究結果は、スクリーンタイムが長いことは、ASD の体質に関連しており、原因ではなくむしろ早期兆候である可能性を示唆するものと考えられます。また ADHD の遺伝的リスクを持つお子さんでは、特にスクリーンタイムが長くなりすぎるリスクがあるため、注意が必要であると言えると思われます。
本研究成果は、国際的に権威の高い英文誌である米国医学会誌「Psychiatry Research」2023 年 9 月号に掲載されました。

 

【ポイント】

・18 ヶ月から 40 ヶ月の幼少時のお子さんのスクリーンタイム※1 は大きく 4 つのグループに分かれる
・ASD に対する遺伝的なりやすさがあるとスクリーンタイムが幼少早期から長くなりやすい
・ADHD の遺伝的なりやすさがあると、当初は短くても成長とともにスクリーンタイムが長くなりやすい

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【用語説明】

※1 スクリーンタイム:
テレビやタブレット、スマートフォンやゲーム機器などを見たり、遊んだりして過ごす時間
※2 ASD(Autism Spectrum Disorder):
自閉スペクトラム症: 社会的コミュニケーションの苦手さ、こだわりの強さと感覚過敏を特徴とする神経発達症で、18 歳以下の約 2.5%に見られると報告されています。
※3 ADHD(Attention Deficit Hyperactivity Disorder):
注意欠如多動症:じっとしていることや待つことが苦手といった多動性・衝動性と、集中力を持続することが苦手といった不注意を特徴とし、18 歳以下の約 5%に見られると報告されています。

 

【論文情報】

雑誌名:Psychiatry Research (2022 インパクトファクター: 11.3)
論文タイトル:The association between screen time and genetic risks for neurodevelopmental disorders in children
著者名・所属名:
高橋長秀 1,*、土屋賢治 2,3,*、奥村明美 2,3、原田妙子 2,3、岩渕俊樹 2,3、Md Shafiur Rahman2,3、西村倫子 2,3
1 名古屋大学医学部附属病院親と子どもの心療科
2 浜松医科大学子どものこころの発達研究センター
3 大阪大学大学院連合小児発達学研究科
* 共同筆頭著者
DOI: 10.1016/j.psychres.2023.115395

 

English ver.
https://www.med.nagoya-u.ac.jp/medical_E/research/pdf/Psy_230821en.pdf

 

【研究代表者】

医学部附属病院 高橋 長秀 准教授
https://www.med.nagoya-u.ac.jp/seisin/