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農学

2023.10.31

イネの側根の形が決まるしくみを時系列で明らかに ~養水分の吸収効率を改良する育種への応用に期待~

国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学生物機能開発利用センターの山内 卓樹 准教授は、同大学農学国際教育研究センターの犬飼 義明 教授、同大学大学院生命農学研究科の中園 幹生 教授らとの共同研究で、イネの冠根・不定根注3)から二次的に生じる側根の形態を3つの指標に分割し、将来側根を作る細胞が生じてからの時系列で解析することで、植物ホルモンのオーキシンを介した側根の個性の決定に重要なメカニズムの一端を明らかにしました。
現在、気候変動によるイネの収量・品質低下が課題となっており、収量の高い品種や乾燥耐性を持つ品種の作出が求められています。植物の側根は根茎の表面積を大きく増やすため、植物種間や栽培条件によって側根の形態の個性がことなる仕組みが分かれば、養水分の吸収を改良するような育種に役立つ可能性があります。
側根の数や大きさは植物ホルモンのオーキシンが制御していることが知られていますが、イネにおいてはオーキシン関連遺伝子がそのプロセスに果たす機能は明らかではありません。本研究では統計モデルを用いて側根の形態を数、幅、長さに分けて時間経過でとらえることで、複数のオーキシン関連遺伝子が側根の形成に与える影響を明らかにしました。将来的には、本研究成果を活用し、側根の個性を決める遺伝子を制御することで、有用な作物品種の育成に貢献できる可能性があります。本研究成果は、2023年10月13日付アメリカ植物生物学会の学会誌「Plant Physiology」電子版に掲載されました。

 

【ポイント】

・イネの側根注1)の形(数、幅、長さ)が決まるしくみを、時系列で予測する統計モデルを作成した。
・側根の形態と、植物ホルモンのオーキシン注2)に関連する遺伝子の発現量の変化を時系列で比較して、側根の個性に関わる遺伝子の機能を解明した。
・養水分の吸収を担う側根の個性を決めるメカニズムをより深く理解することで、高い養水分の吸収効率を持つ有用な品種の育成に貢献することが期待される。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【用語説明】

注1)側根:
主根や不定根(冠根)、種子根などから枝分かれして側方に伸長する比較的細い根を側根と呼ぶ。側根の維管束系は発生した元の主根などと繋がっており、側根から吸収された養水分は主根などを経由して葉などの地上部に運ばれる。
注2)オーキシン:
植物において細胞の伸長や分化、分裂を促進することで、形態変化や、光・重力などへの応答を制御するホルモン。
注3)冠根(かんこん)・不定根:
幼根(胚発生時に形成される根で、双子葉類では後に成長して主根となる)や側根以外の根を主に不定根と呼ぶ。イネは節由来の複数の節根(不定根)から構成されるひげ根型根系を形成します。このイネの不定根を冠根と呼ぶ。

 

【論文情報】

雑誌名:Plant Physiology
論文タイトル:Age-dependent analysis dissects the stepwise control of auxin-mediated lateral root development in rice(齢依存的な解析によるオーキシンを介したイネの側根の段階的な発生プロセスの解明)
著者:Takaki Yamauchi, Akihiro Tanaka, Mikio Nakazono, Yoshiaki Inukai
山内 卓樹、田中 瑛大、中園 幹生犬飼 義明)下線は本学教員

        
DOI: doi.org/10.1093/plphys/kiad548
URL: https://academic.oup.com/plphys/advance-article/doi/10.1093/plphys/kiad548/7311020?login=false

 

【研究代表者】

生物機能開発利用研究センター 山内 卓樹 准教授