名古屋大学大学院医学系研究科皮膚科学講座の江畑葵(えばた あおい)大学院生、桃原真理子(ももはら まりこ)助教、深浦遼(ふかうら りょう)大学院生、秋山真志(あきやま まさし)教授らの研究グループは、IgA 血管炎(IgAV)および皮膚白血球破砕性血管炎(CLV)の患者皮膚においてヤヌスキナーゼ(JAK)という酵素が活性化していることを明らかにしました。
IgAV と CLV は皮膚の症状を主体とする血管炎であり、皮膚の壊死や潰瘍など、患者のQOL を著しく低下させる症状を長期にわたり呈することがあります。ステロイドや免疫抑制剤の内服が全身療法として用いられますが、治療は十分には確立されていません。
JAK 阻害薬は近年様々な疾患に適応が通っており、皮膚科領域においてはアトピー性皮膚炎や尋常性乾癬、乾癬性関節炎で使用されています。
本研究では、IgA 血管炎および皮膚白血球破砕性血管炎に罹患した患者さんの皮膚でJAK が活性化されていることを明らかにし、JAK 阻害薬が皮膚の血管炎に対する新たな治療選択肢になりうることを示しました。
本研究成果は「Journal of the American Academy of Dermatology」の 2023 年 11 月 3 日付オンライン版に掲載されました。
・IgA 血管炎(IgAV)※1、皮膚白血球破砕性血管炎(CLV)※2 は皮膚の症状を主体とする血管炎であり、皮膚の壊死や潰瘍など、患者の QOL(Quality of life:生活の質)を著しく低下させる症状を長期にわたり呈することがあります。
・ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬※3 は、近年様々な疾患に適応※4 が通っており、皮膚科領域においてはアトピー性皮膚炎や尋常性乾癬、乾癬性関節炎で使用されています
・本研究では、 IgAV および CLV に罹患している患者さんの皮膚で JAK が活性化していることを明らかにし、JAK 阻害薬が新たな治療選択肢になりうることを示しました。
◆詳細(プレスリリース本文)はこちら
※1 IgA 血管炎(IgAV):小型の血管に炎症がおき、発熱や発疹、関節痛、消化器症状、腎臓の機能の低下などが起こる。
※2 皮膚白血球破砕性血管炎(CLV):皮膚に限局して小型の血管に炎症がおきる。皮膚症状が主体であり、発熱や関節痛を伴うこともある。
※3 ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬:JAK と呼ばれる酵素の働きを阻害する内服薬。
※4 適応:効果が医学的に証明され、薬剤などが対象疾患に対して使用が認められること。
雑誌名:Journal of the American Academy of Dermatology
論文タイトル:Increased JAK activation in cutaneous vasculitis
著者名・所属名:
Aoi Ebata, Mariko Ogawa-Momohara*, Ryo Fukaura, Yuta Yamashita, Haruka Koizumi, Takuya Takeichi, Yoshinao Muro, Masashi Akiyama
Dermatology, Nagoya University Graduate School of Medicine, Nagoya, Japan
DOI: 10.1016/j.jaad.2023.10.056
English ver.
https://www.med.nagoya-u.ac.jp/medical_E/research/pdf/Jou_231121en.pdf
大学院医学系研究科 桃原 真理子 助教
https://www.med.nagoya-u.ac.jp/derma/research.html