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台風は大きな災害を引き起こす自然の脅威です。将来、地球温暖化が進行し海面水温が上昇した場合、台風もより強く発達することが危惧されています。一方で、強い台風は海面水温を低下させることも知られています。
国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学宇宙地球環境研究所の金田 幸恵 特任助教、相木 秀則 准教授らの研究グループは、高解像度の領域大気海洋結合モデル「CReSS-NHOES」を用いて、台風と台風に伴う海洋応答をともに水平解像度1-2kmという高解像度で初めて同時にシミュレートすることで、中緯度の顕著台風の温暖化に伴う強度変化が台風の引き起こす海面水温の低下によって緩和されることを定量的に明らかにしました。本研究では、大型で移動の遅い台風は温暖化の影響を受けづらく、対して小型で移動の速い台風は温暖化とともに発達しやすいことを示しています。現在、台風強度の気候変動予測研究は、強い台風の強度や構造を再現することが難しい水平解像度が粗いモデルや大気のみのモデルで実施されています。強い台風の強度・構造と海洋の応答も高い精度で再現しうる高解像度領域大気海洋結合モデルを用いた本研究の取り組みは、温暖化気候下の台風強度の定量的な予測だけでなく、現在の台風強度の予報精度向上にも寄与することが期待されます。
本研究成果は、2023年12月29日付American Geophysical Unionの論文誌「Geophysical Research Letters」に掲載されました。

 

【ポイント】

・日本に大きな影響を与えた4例の強い台風を対象に、高解像度領域大気海洋結合モデル「CReSS-NHOES」注1)を用いて、将来、温暖化が進んだ環境下における最大強度を予測した。
・その結果、地球温暖化の進行とともに台風は強くなるも、その発達幅は台風毎に大きく異なることを発見した。
・大型で移動の遅い台風は、自身が引き起こす海面水温の低下の影響で、温暖化が進行しても発達幅が小さくなることを明らかにした。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【用語説明】

注1)高解像度領域大気海洋結合モデル「CReSS-NHOES」:
台風の壁雲やレインバンドといった構造を精巧に表現する3次元領域雲解像モデルCReSSと黒潮といった精緻な海洋構造を表現する3次元海洋モデルNHOESを結合した領域大気海洋結合モデル。大気モデルCReSSと海洋モデルNHOESを同一の水平格子で結合する。

 

【論文情報】

雑誌名:Geophysical Research Letters
論文タイトル:Buffering Effect of Atmosphere?Ocean Coupling on Intensity Changes of Tropical Cyclones under a Changing Climate
著者:S. Kanada, and H. Aiki(ともに名古屋大学 宇宙地球環境研究所 所属)
DOI: 10.1029/2023GL105659                                  

URL: https://agupubs.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1029/2023GL105659

 

【研究代表者】

宇宙地球環境研究所附属統合データサイエンスセンター 金田 幸恵 特任助教
http://www.rain.hyarc.nagoya-u.ac.jp/