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農学

2024.02.22

伝統的な里山管理は根っこから斜面を安定させる!

国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学大学院環境学研究科の平野 恭弘 准教授、生命農学研究科の谷川 東子 准教授らの研究グループは、兵庫県立農林水産技術総合センター(森林林業技術センター)、東京大学、京都大学、福知山公立大学、兵庫県立大学との共同研究で、放置された里山に多く生育するヒサカキについて、個体あたりの幹数の違いが斜面の土壌崩壊注1に及ぼす影響を世界で初めて明らかにしました。この結果は、幹を間引く伝統的な里山管理の意義を科学的に支持しており、放置里山の具体的な管理手法として期待されます。
なお、本研究成果は2月16日にCATENA注2で論文公開されました。

 

【ポイント】

(1) ヒサカキの詳細な根系調査から、幹数の違いにより根系構造が異なることを明らかにしました。
(2) 複数幹のヒサカキは株近くで根が競争し成長が抑制されるため、斜面で倒伏しやすく土壌崩壊時の滑り面を形成しやすいことが分かりました。
(3) 幹を間引く伝統的な里山管理は、斜面を安定させることが期待されます。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【用語説明】

注1 土壌崩壊:滑り面にある岩盤上部に載っている、厚さ0.5-2 mの表層土壌が滑り落ちる現象のこと
注2 CATENA:地形の発達や景観生態学に関する独創的なフィールド調査等を記述した原著論文を掲載する学際的な土壌科学の国際専門誌

 

【論文情報】

論文タイトル
Effect of sprouting and corresponding root distribution of the shrub species Eurya japonica on slope stability(低木種ヒサカキの萌芽とそれに伴う根の分布が斜面安定に及ぼす影響)
著者(所属)
山瀬敬太郎(兵庫県立農林水産技術総合センター)、池野英利(福知山公立大学情報学部)、堀田紀文(東京大学大学院農学生命科学研究科)、今若舞(兵庫県立大学環境人間学部)、大橋瑞江(同左)、谷川東子(名古屋大学大学院生命農学研究科)、藤堂千景(兵庫県立農林水産技術総合センター)、檀浦正子(京都大学農学研究科)、平野恭弘(名古屋大学大学院環境学研究科)
掲載誌
CATENA
DOI
10.1016/j.catena.2024.107869
研究助成
本研究は、文部科学省研究費補助金「地上部植生と地中レーダを用いて広葉樹林における根の崩壊防止力を知る(20H03040)」と、「地中レーダを用いた樹木根系の最大深さと構造の非破壊推定手法の提案(20H03028)」の助成を受けて実施しました。

 

【研究代表者】

大学院環境学研究科 平野 恭弘 准教授

https://www.eps.nagoya-u.ac.jp/~geosys/index.html
大学院生命農学研究科 谷川 東子 准教授
https://sites.google.com/view/plant-soil-nu