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農学

2024.03.12

地上のカエルの卵は樹上よりも保温され、孵化に有利 ~地球"寒冷化"時代の産卵戦略を維持?~

名古屋大学大学院生命農学研究科の市岡 幸雄 博士後期課程学生、梶村 恒 教授の研究グループは、日本の森林に生息する両生類の一種、モリアオガエルの産卵行動に関する論文を発表しました。
このカエルは、池の水面上の樹木の枝先(樹上)や、岸の地面(地上)にも泡状の巣を作り、その中に産卵します。アオガエルの仲間には、こうした産卵場所の多型が見られます。しかし、異なる産卵場所が卵にどのような影響を及ぼすのか、そして、天敵に捕食されやすい地上になぜ産卵するのかはわかっていませんでした。
巣の内部の温度と周辺の気温を同時に計測して比較すると、気温が低い時は、巣内温度が樹上よりも地上で高くなりました。つまり、地上産卵には巣内温度を保温する利点があったのです。また、卵の孵化率も樹上よりも地上で高くなりました。卵は低温が進むと死亡することが知られています。地上産卵が寒冷化の進む時代に出現したのは、こうした機能が卵を低温から守るのに有利だったからかもしれません。また、地上産卵は現代においても、とくに高標高の冷涼な環境で有効だと考えられます。本研究は、生息環境の温度変化に応じた両生類の合理的な産卵戦略を見出し、森林生物の生態進化についての理解を進めました。
本研究の成果は、2024年3月5日付、イギリスの科学雑誌『Ecology and Evolution』に掲載されました。

 

【ポイント】

・モリアオガエル注1)は、樹上だけでなく地上にも、“泡巣注2)”と呼ばれる巣を作って産卵するが、樹上よりも天敵による捕食リスクが高い地上で産卵する理由は不明であった。
・樹上および地上の泡巣内の温度を、周辺の気温と同時にモニタリングした。気温が低い時、泡巣内温度は樹上よりも地上で高かった。孵化率も樹上よりも地上で高かった。
・モリアオガエルの生息地では、ときに卵にとって危険なほど気温が低下することがあるため、地上産卵による低温の回避は繁殖戦略として有効である可能性がある。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【用語説明】

注1)モリアオガエル
本州・佐渡島の森林に生息するカエル。体長は4-8cm。繁殖期には止水(水が溜まった小さな池)周辺に集結する。アオガエル科Zhangixalus 属に分類される。
注2)泡巣
産卵の際に、成体が体内から分泌物を出して作る泡状の構造物。モリアオガエルの場合、大きさは10cm前後で、形は球状。泡巣を作る生態は、アオガエル科を含め、いくつかの科で見られる。

 

【論文情報】

雑誌名: Ecology and Evolution
論文タイトル: Arboreal or terrestrial: Oviposition site of Zhangixalus frogs affects the thermal function of foam nests
著者:Yukio ichioka (名古屋大学大学院生命農学研究科博士後期学生/2022年度名古屋大学融合フロンティア次世代リサーチャー), Hisashi Kajimura (名古屋大学大学院生命農学研究科教授)
DOI: 10.1002/ece3.10926

 

【研究代表者】

大学院生命農学研究科 梶村 恒 教授
https://forest-protection-nu.jimdofree.com/

 

【関連情報】

インタビュー記事「樹上と地上、どっちがカエル(孵る)?」(名大研究フロントライン)