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生物学

2024.03.13

メダカは雌も雄も卵を作る準備をする ~卵の極性を作り出す仕組みを発見~

名古屋大学大学院理学研究科の菊地 真理子 助教、田中 実 教授らの研究グループは、北海道大学大学院水産科学研究院 西村 俊哉 助教、京都大学大学院理学研究科の森 和俊 教授らとの共同研究により、メダカ注2)をもちいて卵の極性(不均一性)が作り出される仕組みを分子レベルで明らかにしました。
卵から子供ができるためには、前後・左右・上下の軸(体軸)ができる必要があります。卵は体軸を作るために細胞内が極性(不均一性)を示しますが、これは精子には見られない卵特有の性質です。研究グループは、微小管注3)を調べることで、この卵に特有の不均一性がメスやオスに性決定される前からできていることを発見しました。メダカの性は受精後4日目に決まりますが、それ以前は卵のもととなる生殖細胞は卵にも精子にもなることができます。ところが卵に特有の不均一性は、性決定前の受精後2日目までに生殖細胞の中にできていることが分かりました。この発見は、性が決まる前に、将来のメス・オスどちらでも生殖細胞はすでに卵を作る準備をしているという興味深い事象を示しており、同時に、脊椎動物注4)の身体の軸構造形成がいつ始まるのかを示す初めての結果です。
本研究成果は、2024年3月13日9時(日本時間)付でイギリスの科学専門誌「Development」に掲載されました。

 

【ポイント】

・メダカにおいて、生殖細胞は性が決まる前から卵になる準備をしている。
・卵の極性(不均一性)注1)を作り出す細胞内構造を発見。
・生殖細胞の性決定や、脊椎動物における体軸形成の解明に資する知見。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【用語説明】

注1) 極性(不均一性):
細胞内に、空間的、形態的、構造的な非対称性が存在すること。たとえば、細胞の構成成分が細胞内で空間的に異なる分布を示すことなどを指す。
注2) メダカ:
小学校の理科教科書にも載っている日本人に馴染み深い魚。生物学や基礎医学研究において日本が誇る実験動物であり、「medaka」は 英語としても通用し、生物学各分野の最先端研究で用いられている。身体の性を決める遺伝子(性決定遺伝子)も哺乳類についで二番目に同定された。
注3) 微小管:
真核生物における主要な細胞骨格の一つ。チューブリンから構成される繊維で、重合と脱重合を繰り返す動的な構造物であり、多様な細胞機能に重要な役割を果たす。
注4) 脊椎動物:
背骨がある動物。哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、魚類などが含まれる。

 

【論文情報】

雑誌名:Development
論文タイトル:Sexually dimorphic dynamics of the microtubule network in medaka (Oryzias latipes ).
著者:菊地 真理子、吉村 弥与、石川 時郎、神田 悠社、森 和俊、西村 俊哉、田中 実
※下線は本学関係教員
DOI:10.1242/dev.201840

 

【研究代表者】

大学院理学研究科 田中 実 教授
http://www.medaka.bio.nagoya-u.ac.jp/index.html