名古屋大学大学院工学研究科の長野 方星 教授、渡邉 紀志 特任准教授、上野 藍講師、Shawn Somers-Neal博士後期課程らの研究グループは、電力を用いずに10kW以上の熱を輸送できるループヒートパイプ技術を新たに開発しました。
ループヒートパイプはウィック注2)と呼ばれる多孔質体(スポンジ構造)で生じる毛細管現象をポンプの駆動力に利用することで、電力を使用せずに半永久的に熱を輸送できる技術です。これにより、従来の機械式ポンプで消費されてきた電力が不要となります。
今回開発したループヒートパイプは、排熱を受けとる蒸発器の構造を最適化し、ウィック表面の液体を効率よく蒸発させることで、蒸発器のサイズを18%小型化しつつ、熱伝達特性を4倍以上向上させ、最大で10kWの排熱を2.5m先まで無電力で輸送することに成功しました。この規模の熱量を電力無しで運べる技術はこれまでにはなく、世界最大の無電力熱輸送を実現しました。
本技術は、工場排熱利用、太陽熱利用、電気自動車熱マネージメント、データセンターの冷却など、様々な分野の省エネ化やカーボンニュートラルに貢献します。
本研究成果は、2024年7月4日付Elsevier B.V.の発行する学術論文誌「International Journal of Heat and Mass Transfer」に掲載されました。
・世界初!10kWの熱を無電力で2.5m先まで輸送可能なループヒートパイプ注1)を開発。
・蒸発器構造を工夫することで小型化と高い蒸発熱伝達性能を両立。
・電力不要で大量の熱を効率的に輸送、様々な分野での熱利用や冷却技術として期待。
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注1) ループヒートパイプ:
ウィックの毛細管力を駆動源とする無電力の熱輸送デバイスである。360度あらゆる方向に熱を無電力で輸送することができる。
注2) ウィック:
無数の細孔からなるもので,液を吸収することで毛細管力を得ることができる。
雑誌名: International Journal of Heat and Mass Transfer
論文タイトル: Experimental investigation of a 10 kWw-class flat-type loop heat pipe for waste heat recovery
著者: Shawn Somers-Neal(博士後期課程),Tatsuki Tomita(本学卒業生),Noriyuki Watanabe(特任准教授),Ai Ueno(講師),Hosei Nagano(教授)
DOI: https://doi.org/10.1016/j.ijheatmasstransfer.2024.125865
URL: https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0017931024006963