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社会科学

2024.07.18

価格設定のしくみを解明 ~店舗の多い企業ほど「値上げしても客が逃げない」理由~

名古屋大学大学院経済学研究科の花薗 誠 教授と工藤 教孝 教授による研究グループは、開発した数理モデルを解析することによって、店舗数の多い企業は少ない企業よりも高い価格を設定可能であることを数学的に証明し、その仕組みを解明しました。
他企業を圧倒する数の自動販売機を設置している清涼飲料、ある地域に集中的に立地するコンビニエンスストアやコーヒーショップ、ある地域で最大規模のタクシーなど、実は競合他社よりも高い価格設定になっていることが多いですが、そのメカニズムは不明でした。伝統的な経済理論の枠組みでは、供給量を増やすことは価格の下落につながるというのが常識だったからです。
同研究グループは、サーチ理論という数理モデルの構造に着目し、多数の店舗を持つ企業同士が価格競争を行う環境を表現できるような新しい数理モデルの開発に成功しました。その結果、店舗数が増えるほど、消費者は競合他社に遭遇しにくくなるため、高値であっても目の前の取引を受け入れやすくなる結果、店舗数の多い企業が少ない企業よりも高い価格設定を行うという定理を発見し、数学的に証明しました。
この研究成果は価格設定の根本的な解明に迫るものであり、競争政策を立案する上での指針となるだけでなく、世界で進む物価上昇を産業レベルで解明することにつながることが期待されます。
本研究成果は、2024年3月29日付国際的な経済学専門誌「International Economic Review」にオンライン版が掲載されました。

 

【ポイント】

・店舗数の規模が異なる多数の企業が価格競争を行う数理モデルを開発した。
・店舗数の多い企業は消費者にとって「遭遇しやすい」という性質を持つ。
・店舗数の多い企業の店舗をひとつ通り過ぎても結局同じ企業の別店舗が現れることになる可能性が高いため、消費者は「より安い店を探す」という行為が無駄足になりそうだと理解する。
・上記のメカニズムによって、店舗数の多い企業ほど、より高い価格設定を行っても消費者が逃げにくいことを数学的に証明した。
・本研究成果は、競争政策を立案する上での指針となるだけでなく、世界で進む物価上昇を産業レベルで解明することにつながることが期待される。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【論文情報】

雑誌名: International Economic Review
論文タイトル: Prominence and Market Power: Asymmetric Oligopoly with Sequential Consumer Search
著者: Makoto Hanazono (名古屋大学経済学研究科) and Noritaka Kudoh (名古屋大学経済学研究科)
DOI: 10.1111/iere.12704
URL: https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/iere.12704

 

【研究代表者】

大学院経済学研究科 花薗 誠 教授
https://sites.google.com/view/makotohanazono/japanese-top