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医歯薬学

2024.09.13

プロテインキナーゼ N による心不全制御機構の解明 ~難治性である心臓線維症に新たな治療ターゲット~

名古屋大学大学院医学系研究科循環器内科学講座の吉田 聡哉 大学院生、竹藤 幹人 講師、室原 豊明 教授らの研究グループは、心臓の線維化においてプロテインキナーゼ N(PKN)が重要な役割を担っていることを明らかにしました。
高齢化社会を背景に急増している心不全は、予後不良で難治性の疾患で今や社会問題となっています。心臓は障害を受けると線維化を形成し心臓の構造を維持しようとしますが、過剰な線維化は心臓の機能を障害、低下させ、心不全の発症および進展に大きく寄与します。この心臓線維化のメカニズムに関しては未だ不明な点を多く認めます。以前、本研究グループは心筋細胞の PKN の活性が心筋肥大や心不全に関与することを報告しました(Sakaguchi et al., Circulation 2019)。今回の研究では、心臓線維化を形成する主要な細胞である心臓線維芽細胞に注目し、心臓線維芽細胞に存在する PKN の役割について検討を行いました。心筋梗塞や代謝障害により過剰な心臓の線維化が引き起こされ心臓の機能は低下していきますが、心臓線維芽細胞のPKN 欠損マウスは、野生型マウスに比べこれらによる過剰な線維化が減少し、心臓の機能低下も改善されました。また PKN が心臓線維化を制御している機序として、PKNは p38 MAPK 活性を介して心臓線維芽細胞の分化を調整していることを明らかにしました。

 

本研究成果は、2024年9月12日付で英国、米国科学誌『Nature Communications』に掲載されました。

 

【ポイント】

・高齢化社会を背景に心不全パンデミックと呼ばれるほど心不全患者は増加しており、心不全の新たな治療法の開発は急務の課題である。
・心不全には心臓線維化が大きく関与しており、その主体は心臓線維芽細胞が担っているが、詳細なメカニズムは未だ解明されていない。
・心筋梗塞および心不全モデルにおいて、心臓線維芽細胞にあるプロテインキナーゼN(PKN)は心臓線維化や心機能を制御していることを発見した。
・PKN は心臓線維芽細胞の分化を調整することで、心臓線維化を制御していることを解明した。
・本研究で初めて示した PKN による心臓線維化制御機構から、今後 PKN が心不全の新たな治療標的になることが期待される。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【論文情報】

雑誌名:Nature Communications
論文タイトル:Protein kinase N promotes cardiac fibrosis in heart failure by fibroblast-to-myofibroblast conversion
著者:Satoya Yoshida,1 Tatsuya Yoshida,1 Kohei Inukai,1 Katsuhiro Kato,1 Yoshimitsu Yura,1 Tomoki Hattori,1 Atsushi Enomoto,2 Koji Ohashi,3 Takahiro Okumura,1 Noriyuki Ouchi,3 Haruya Kawase,1, 4 Nina Wettschureck,4 Stefan Offermanns,4 Toyoaki Murohara,1 and Mikito Takefuji.1
所属:
1Department of Cardiology, Nagoya University School of Medicine, Nagoya, Japan
2Department of Pathology, Nagoya University School of Medicine, Nagoya, Japan
3Department of Molecular Medicine and Cardiology, Nagoya University School of Medicine, Nagoya, Japan
4Department of Pharmacology, Max Planck Institute for Heart and Lung Research, Bad Nauheim, Germany

 

DOI:10.1038/s41467-024-52068-0

 

English ver.
https://www.med.nagoya-u.ac.jp/medical_E/research/pdf/Nat_240912en.pdf

 

【研究代表者】

大学院医学系研究科 竹藤 幹人 講師
https://www.med-nagoya-junnai.jp/