名古屋大学大学院医学系研究科循環器内科学の病院助教 近藤徹、室原豊明教授、心臓外科学の六鹿雅登教授らの研究グループは、Impella を要する心原性ショックの高精度予後予測モデルの構築に成功しました。
心原性ショックは、しばしば救命のために機械的循環補助が必要になります。しかしながら、心原性ショックは致死率の高い病態であり、特に機械的循環補助を要する場合の院内死亡率は高く、30%を超えます。近年、Impella が心原性ショックの治療のための新たな機械的循環補助の選択肢に加わり、すでに広く臨床で用いられるようになっています。近年の研究では、通常治療に加えて Impella を用いることで予後が改善する報告もあり、今後ますます広く用いられる可能性が高いです。
重篤な心原性ショックの治療方針の決定には正確な予後予測が必須ですが、これまで Impella を要する心原性ショックの高精度の予後予測モデルはありませんでした。本研究は、Impella 症例を全例収集した全国データベースである J-PVAD2)レジストリのデータを用いて、高精度の予後予測モデルの開発に成功しました。予後予測モデルは、日常診療で用いられる指標で構成されるために、広く診療で用いることが可能です。
本研究により、より適切に Impella による治療が心原性ショックの患者さんに届けられることが期待されます。
本研究成果は、2024年 9 月 19 日付『European Journal of Heart Failure』に掲載されました。
・心原性ショックは致死率の高い病態であり、しばしば機械的循環補助が必要となる。
・近年 Impella1)が新たな機械的循環補助の選択肢になり、広く用いられている。
・本研究グループは、Impella を要する心原性ショックの高精度予後予測モデルである「J-PVAD risk score」の開発に成功した。
◆詳細(プレスリリース本文)はこちら
1) Impella(インペラ):経皮的に挿入可能な新規の循環補助用ポンプカテーテル。
2) J-PVAD : Japanese registry for Percutaneous Ventricular Assist Device の略。補助人工心臓治療関連学会協議会 インペラ部会のこと。関連する 10学会より構成され、日本国内における Impella を安全かつ有効に普及させることを目的としている。
雑誌名:European Journal of Heart Failure
論文タイトル:Predicting survival after Impella implantation in patients with cardiogenic shock: J-PVAD risk score
著者:近藤徹、吉住朋、森本竜太、今泉貴広、風間信吾、平岩宏章、奥村貴裕、室原豊明、六鹿雅登
DOI: 10.1002/ejhf.3471
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https://www.med.nagoya-u.ac.jp/medical_E/research/pdf/Eur_241001en.pdf