電気通信大学大学院情報理工学研究科情報・ネットワーク工学専攻 南條壮汰氏(研究当時細川研究室協力研究員、現スウェーデン宇宙物理学研究所)と名古屋大学宇宙地球環境研究所塩川和夫教授は、2024年5月11日に日本の写真家が観測した青いオーロラの写真を解析し、その出現領域の推定を行いました。2名の写真家が石川県と長野県でそれぞれ同日23時30分頃に出現した青い低緯度オーロラの撮影に成功し、それらの写真に三角測量(※1)を適用することで青いオーロラの経度方向の広がりや、高度方向の分布を求めました。普段オーロラが見られない中低緯度領域で、磁気嵐中に赤いオーロラと同時に青いオーロラが出現することは、過去にも報告例がありますが、今回はそのような青いオーロラの空間構造を初めて可視化することに成功しました。観測結果によると、このオーロラには磁力線に沿う縦状の構造や、経度方向に数百kmの間隔で隔たりを持つことがわかりました。これは、過去に提案された青いオーロラの生成機構では説明が難しいものであり、今後より詳しい解釈が求められます。また、青いオーロラは、未だ多くの謎に包まれている地球の窒素分子イオンが磁気圏(※2)に散逸する過程で可視化される可能性があり、地球大気の磁気圏への流出過程の理解に役立ちます。
● 5月に発生した巨大磁気嵐時に日本から青い低緯度オーロラが観測された。
● 観測は2名の写真家によって行われ、オーロラの空間構造の推定に貢献した。磁気嵐中の青いオーロラの空間構造が可視化されたのは初めてのことである。
● 青いオーロラに磁力線に沿う構造があることは、過去に提案された青いオーロラの生成メカニズムでは説明がつかない。
この研究成果は、2024年12月5日に、学術論文誌「Earth, Planets and Space」のオンライン版に掲載されました。
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(※1)三角測量
2つの既知な点から一つの物体を計測し、それらの視差から物体の座標を推定する数学的な手法。
(※2)磁気圏
地球の固有磁場の影響が及ぶ領域。
論文雑誌名: Earth, Planets and Space
タイトル: Spatial Structures of Blue Low-Latitude Aurora Observed from Japan during the Extreme Geomagnetic Storm of May 2024
著者: Sota Nanjo and Kazuo Shiokawa
URL: https://earth-planets-space.springeropen.com/articles/10.1186/s40623-024-02090-9
DOI: 10.1186/s40623-024-02090-9