名古屋大学医学部附属総合医学教育センターの尾上 剛史 病院講師(附属病院糖尿病・内分泌内科兼任)、髙見 秀樹 病院講師(附属病院消化器・腫瘍外科兼任)らの研究グループは、日本医学教育学会 モデル・コア・カリキュラム改訂等に関する「調査研究チーム」との共同研究で、日本の医学部教育における「情報・科学技術を活かす能力」の獲得のために必要な学習目標を初めて具体化しました。
医療現場では情報通信技術の活用が進んでいますが、その学習のための具体的な教育内容や目標はこれまで明確に定義されていませんでした。日本の医学部教育のガイドラインである医学教育モデル・コア・カリキュラム(*1)令和 4 年度改訂版では、新たに「情報・科学技術を活かす能力」が、医師として求められる基本的な資質・能力に組み込まれました。そこで、本研究ではその改訂作業の一環として、医学部教育における情報科学技術に関する具体的な学修目標を検討しました。
文献調査と 2 回に渡る医学教育関係者へのパネル調査(*2)を通じて、最終的に「倫理とルール」、「原理」、「活用」の 3 つのテーマに分類される 13 項目の学修目標が決定されました。今回設定された学修目標に基づき、今後は医学部のカリキュラムの見直しが進み、デジタル時代に適応した医師の輩出が期待されます。また、この成果は他国の医療教育のモデルケースに成り得ると考えられます。
本研究成果は、2024 年 11 月 15 日付『Medical Teacher』誌に掲載されました。
・医学教育モデル・コア・カリキュラム令和 4 年度改訂版では、新たに「情報・科学技術を活かす能力」が、医師として求められる基本的な資質・能力に組み込まれました。
・本研究ではその改訂作業の一環として、文献調査および専門家パネル調査を通じ、日本の医学部教育における情報科学技術に関する具体的な学修目標を初めて具体化しました。
・最終的に「倫理とルール」、「原理」、「活用」の 3 つのテーマに分類される 13 の学習目標が決定されました。
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*1)医学教育モデル・コア・カリキュラム:日本の医学部が作成する「カリキュラム」のうち、全大学で共通して取り組むべき「コア」の部分を抽出して、「モデル」として体系的に整理したものです。各医学部の学修時間数の 3 分の 2 程度はこのモデル・コア・カリキュラムを踏まえたものとなっています。およそ 6 年おきに改訂され、最新版は令和 4 年度改訂版になります。
*2)パネル調査:特定のテーマや課題に精通した専門家グループを招集し、意見交換や評価を通じて知見を集約し、合意形成を図る方法です。この調査手法は、通常、匿名性を確保しつつ意見を収集し、繰り返しの評価やフィードバックを行うことで、バイアスを最小限に抑え、幅広い視点を反映させた結果を導き出すことを目的とします。医学教育分野では、新たな教育目標やガイドラインを策定する際に、専門家パネル調査を活用することで、実践的かつ信頼性の高い基準を確立することが期待できます。
雑誌名:Medical Teacher
論文タイトル:Developing competencies relating to information science and technology in Japanese undergraduate medical education
著者:尾上剛史(本学), 淺田義和, 今福輪太郎, 黄世捷, 髙見 秀樹(本学), 高橋優三, 野村理, 西城卓也
DOI:10.1080/0142159X.2024.2385199
English ver.
https://www.med.nagoya-u.ac.jp/medical_E/research/pdf/Med_241210en.pdf