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生物学

2025.02.28

深海での竹馬あそび: 潜水艇「しんかい6500」に乗船し、垂直の巣をつくる新種ゴカイを発見

名古屋大学大学院理学研究科附属臨海実験所の自見 直人 講師は、海洋研究開発機構(JAMSTEC)の協力のもと、有人潜水調査船「しんかい6500」に自ら乗船し、深海を直接探索することで、新種のゴカイ タケウマカザリゴカイ Melinnopsis shinkaiae を発見しました。本種は第一鹿島海山(北西太平洋)の水深3,623mの深海底で、まるで竹馬に乗っているかのように垂直に立つ巣を構築し、その上部で生活する独特の生態を持っています。
巣をつくるゴカイの仲間は一般的に泥の中で生活し、表面に出てくることはありません。このような垂直の巣をつくり、その上部で生活するゴカイの生態は珍しく、特殊な生活戦略を示しています。深海における生物調査は底引き網等が20世紀は主流であり、実際に海の底でどのような暮らし方をしているのかは見ることができませんでした。潜水艇の出現後、このような人間が直接行けない海域においても生物の生態を明らかにすることが可能となりました。この発見は、深海生物の多様な生活様式や生態系の理解を深める手がかりとなります。
本研究成果は、2025年2月28日付で、日本プランクトン学会・ベントス学会が発行する国際査読付き学術誌『Plankton and Benthos Research』に掲載されます。

 

【ポイント】

・深海底で垂直に立つ巣を構築し、その上部で生活する新種のゴカイを発見した。
・研究者自身が有人潜水調査船「しんかい6500注1)」に乗船し、直接深海を探索することで、このユニークな生態を持つゴカイを発見した。
・この発見は、深海生物の多様な生活様式や生態系の理解を深める手がかりとなる。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら
 

【用語説明】

注1)しんかい6500:
海洋研究開発機構の保持する有人潜水調査船。しんかい6500は、日本で一番深くまで潜ることのできる潜水艇。パイロット2名+研究者1名またはパイロット1名+研究者2名で潜行する。1991年から30年以上運用されており、後継機の開発が望まれる。

 

【論文情報】

雑誌名:Plankton and Benthos Research
論文タイトル:Taxonomy and ecological insights into Melinnopsis shinkaiae sp. nov., a polychaete with a vertical tube from the Daiichi-Kashima seamount (Northwest Pacific)
著者:Naoto Jimi, Natsumi Hookabe, Sau Pinn Woo, Yoshihiro Fujiwara
DOI:10.3800/pbr.20.29
URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/pbr/20/1/20_B200101/_article/-char/ja

 

【研究代表者】

大学院理学研究科附属臨海実験所 自見 直人 講師
https://sites.google.com/site/polychaetesnaotojimi/home

https://www.bio.nagoya-u.ac.jp/~SugashimaMBL/