TOP   >   数物系科学   >   記事詳細

数物系科学

2025.04.25

微小な振幅活動が"遅れ"結合により1億倍の巨大振動に 音声、画像、通信など信号情報処理技術などへの応用に期待

名古屋大学大学院情報学研究科の大平 健太 研究員、大平 英樹 教授と多元数理科学研究科の大平 徹 教授らの研究グループは、遅れを含んだ相互作用を行うことにより、個々においては微小な振幅しか持たないような素子(ユニット)であっても、たった二つ結合するだけで1億倍近い振動活動の増幅が生まれる現象を新たに理論的に発見しました
自然や生命現象にはさまざまな振動現象が見られます。特に生体においても色々なリズムが存在します。これらはどのように生み出されるのでしょう。例えば心臓の鼓動のリズムを生み出す組織は数千から1万個の細胞から構成されています。一般的には微小振動を持つ細胞やユニットが、それなりの数集まることで、相応の振動振幅を持つ信号が生み出されると考えられます。しかし、本研究では、具体的な数理モデルを構築し、個々には微弱な振動活動をするユニットであっても、相互作用に遅れを持つような場合を考えると、1億倍にも振動振幅が増幅されることを示しました。実験によるこのつなぎ換え相互作用による巨大振幅増大の現象が確認できるか、さらに信号情報処理技術への応用があるか、などの探求は今後の課題です。
 

本研究は情報学研究科・価値創造センターのサポート(予兆学)を受け、人文学研究科附属人文知共創センターの活動として行われました。
 

本研究成果は2025年4月8日付で、米国学術雑誌『Chaos: An Interdisciplinary Journal of Nonlinear Science 』の2025年4月号の重要論文のFastTrack扱いでトップに掲示されています。

 

【ポイント】

・個々に切り離された時には微小な振幅の活動を行う素子(ユニット)であるが、つなぎ換えにより遅れ注1)を含んだ結合により振動活動の振幅が1億倍にも増幅される。
・例えば生体などのリズムを生み出すメカニズムとの関連が考えられる。特に微小な活動細胞が多数集まらなくても大きな信号を生み出せることを示した。
・実験により現象が確認されれば、信号情報処理技術などへの応用の道も開ける。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【用語説明】

注1)遅れ:
ここでは相互結合・作用における信号伝達の遅延を意味する。

 

【論文情報】

雑誌名:Chaos: An Interdisciplinary Journal of Nonlinear Science
論文タイトル:Amplitude enhancements through rewiring of a non-autonomous delay system
著者:Kenta Ohira, Toru Ohira, Hideki Ohira      
DOI:https://doi.org/10.1063/5.0252300

 

【研究代表者】

大学院多元数理科学研究科 大平 徹 教授
https://sites.google.com/site/ohiratorue/home/