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医歯薬学

2025.07.15

細胞内へのmRNA送達を促進する新規脂質を開発 ~遺伝子発現の効率を向上、mRNA医薬開発に貢献~

【研究概要】

・新規環状ジスルフィド脂質(CDL)によって脂質ナノ粒子(LNP)のmRNA送達効率を向上。
・CDL-LNPが細胞内におけるエンドソーム注1)からのmRNA放出を効率化することをin vitro(細胞実験)で確認。
・マウスを用いたin vivo実験において、CDL-LNPがmRNAの送達効率を向上させることを実証。
・抗腫瘍免疫応答の誘導を確認。

 

名古屋大学大学院理学研究科の阿部 洋 教授、名古屋大学学際統合物質科学研究機構の木村 誠悟 特任助教らの研究グループは、従来の脂質ナノ粒子(LNP)が抱えるmRNA送達効率の課題を解決するため、新規の環状ジスルフィド含有脂質(CDL)を設計し、これを組み込んだLNP(CDL-LNP)を開発しました。CDL-LNPは、エンドソームからのmRNA放出を促進し、遺伝子発現効率を向上させることをin vitro(細胞実験)で確認し、in vivo(マウス実験)でも送達効率を改善できることを実証しました。本研究は、mRNA医薬の送達技術の発展に大きく貢献するものであり、将来的にはより効果的で安全なmRNA医薬の開発につながるものと期待されます。
本研究成果は、2025年6月27日にRoyal Society of Chemistry誌が発行する雑誌『RSC Medicinal Chemistry』に掲載されました。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【用語説明】

注1)エンドソーム:
細胞が外部から物質を取り込む際に形成される小さな膜状の構造体で、細胞内へ取り込まれた物質の選別、分解、再利用などを制御する細胞内小器官(オルガネラ)の総称。エンドサイトーシスによって細胞内に取り込まれた物質は、まず初期エンドソームに集められ、その後、後期エンドソーム、ライソソームへと運ばれる。この過程で、物質のリサイクル、分解、細胞外への排出などが制御される。

 

【論文情報】

雑誌名: RSC medicinal chemistry
論文タイトル: In Vivo Demonstration of Enhanced mRNA Delivery by Cyclic Disulfide-Containing Lipid Nanoparticles for Facilitating Endosomal Escape
著者: 木村誠悟*, 岡田佳奈, 松原徳明, Lyu Fangjie, 堤進, 木村康明, 橋谷文貴, 稲垣雅仁, 阿部奈保子, 阿部洋* (*は責任著者、下線は本学関係者)
DOI: 10.1039/D5MD00084J

URL: https://doi.org/10.1039/D5MD00084J

 

【研究代表者】

大学院理学研究科 阿部 洋 教授
https://biochemistry.chem.nagoya-u.ac.jp/