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数物系科学

2025.08.26

惑星形成の歴史に迫る"溶融岩石の雨粒"の起源を解明 ~木星の形成と水の存在が鍵だった~

【研究概要】

・木星の形成により微惑星注1)の衝突が頻繁に発生、溶融岩石の雨粒(コンドリュール)注2)が原始太陽系に降ったことが明らかになった。
・微惑星に含まれる水の存在がコンドリュールの大きさと冷却速度を決定した。
・コンドリュールに残された情報から惑星形成過程の復元に道を開く。

 

名古屋大学大学院環境学研究科の城野 信一 准教授とイタリア・トリノ天文台のDiego Turrini(ディエゴ・トゥリーニ) 主任研究員との共同研究チームは、木星の形成により微惑星の衝突が引き起こされ、太陽系に溶融岩石の雨粒を降らし、微惑星に含まれていた水が雨粒の大きさと冷却速度を決定していたことを新たに発見しました。
地球に落下する隕石には「コンドリュール」と呼ばれる直径0.1~2ミリ程度の球状粒子が非常に多く発見されます。その形状から、岩石が溶融して分裂することで形成されたと考えられていますが、その形成プロセスは明らかではありませんでした。一方で、コンドリュールの冷却速度は10~1000度/時であることが室内実験により推定されていました。
本研究では木星形成後の微惑星の運動を数値シミュレーションすることにより、岩石が溶ける程度の高速衝突が多数起こることを明らかにし、さらに微惑星に含まれる水が急速に膨張することでコンドリュールの直径と冷却速度が再現されることが分かりました。
今後、これまで得られているコンドリュールの膨大なデータを解析することで、衝突した微惑星の大きさや衝突速度がどう変化していったのか、微惑星からどのように惑星が形成されていったのかを明らかにしていくことが期待されます。
本研究成果は、2025年8月25日18時(日本時間)付英国科学雑誌『Scientific Reports』に掲載されました。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【用語説明】

注1)微惑星: 
惑星の元となる直径100~1000キロメートル程度の天体。微惑星が相互に衝突・合体を繰り返すことで惑星が形成する。微惑星の一部は水や有機物といった揮発性物質を含んでいた可能性が高い。
注2)コンドリュール: 
隕石に含まれる直径0.1~2ミリ程度の球状粒子。カンラン石や輝石で構成される。多い場合は隕石の80%以上の体積を占める。形成年代は太陽系形成後100~300万年程度。

 

【論文情報】

雑誌名:Scientific Reports
論文タイトル:Chondrule formation by collisions of planetesimals containing volatiles triggered by Jupiter's formation
著者:Sin-iti Sirono & Diego Turrini
DOI:10.1038/s41598-025-12643-x   

 

【研究代表者】

大学院環境学研究科 城野 信一 准教授
https://www.eps.nagoya-u.ac.jp/~sirono/