・化学合成法を用いることでmRNA(メッセンジャーRNA)の構造を自在に設計・合成する方法論を開発。
・通常と逆末端にキャップ構造注1)を配置した全く新しい分子デザインにおいても、キャップ構造がたんぱく質合成量を向上させる効果があることを発見。
・ポリA鎖注2)の向きを逆転させた場合でも、たんぱく質合成量を向上させる効果があることを発見。
名古屋大学大学院理学研究科の阿部 洋 教授、多田 瑞紀 博士後期課程学生、阿部 奈保子 特任准教授らのグループは、疎水性タグ注3)を用いて非天然な構造を持つmRNAを合成する方法を確立しました。さらに、確立した手法を用いて、mRNAの重要構造である「キャップ構造」を逆末端に配置した全く新しいmRNA分子デザインを考案し、この分子デザインにおいてもキャップ構造としての機能を保持することを見出しました。
本研究は、mRNAの構造と活性に関する知見を深めるとともに、今後のmRNA医薬の分子設計指針の一つとなると期待されます。
本研究成果は、2025年10月12日付で「Angewandte Chemie-International Edition」に掲載されました。
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注1)キャップ構造:
mRNAの5′ 末端に存在する修飾構造であり、mRNAの翻訳促進や安定性向上など、必要不可欠な構造。
注2)ポリA鎖:
mRNAの3′ 末端に存在する修飾構造で、mRNAの安定性向上やたんぱく質合成効率の向上に必要不可欠な構造。
注3)疎水性タグ:
疎水性とは水と混ざりにくい(=油と混ざりやすい)性質のこと。ゆえに、水と混ざりやすい性質のRNA分子に結合させて目印として利用できる、水と混ざりにくい性質をもつタグ(標識)分子のこと。
雑誌名:Angewandte Chemie International Edition
論文タイトル:The Effect of Cap Structure and Poly(A) Positioning on mRNA Translation Efficiency
著者: 多田瑞紀(名古屋大学)、阿部奈保子*(名古屋大学)、稲垣雅仁(名古屋大学)、中嶋裕子(名古屋大学)、大橋咲南(名古屋大学)、平岡陽花(名古屋大学)、Priyanka Uttamrao Deshmukh(名古屋大学)、山根尚幸(名古屋大学)、松原徳明(名古屋大学)、木村康明(名古屋大学)、橋谷文貴(名古屋大学)、阿部洋*(名古屋大学) (*は責任著者)
DOI:10.1002/anie.202514124
URL:https://doi.org/10.1002/anie.202514124