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化学

2026.01.16

「鉄×光」で高価な光学活性物質を1/3に抑える新触媒を開発 レアメタル使わず有用天然物の合成に成功、医薬品開発をもっとエコに

【ポイント】

・豊富な資源である鉄とクリーンなエネルギーである光を掛け合わせた合成法を開発。
・高価なキラル注1)配位子注2)の使用量を1/3に削減することに成功。
・生物活性天然物Heitziamide Aの世界初の不斉全合成注1)を達成。
・理想的な触媒デザインの実現により、環境・コスト面に配慮した医薬品開発の推進が期待される。

 

名古屋大学大学院工学研究科の石原 一彰 教授、大村 修平 助教、赤尾 颯斗 博士後期課程学生らの研究グループは、高価なキラル配位子X*の使用量を最小限に抑えることができる理想的なデザインの鉄(III)光触媒の開発に成功しました。さらに、開発した触媒を用いた選択的な反応を利用することで、生物活性天然物の合成にも成功しました。
光エネルギーを化学エネルギーに変換するプロセスの開発は、再生可能エネルギーである太陽光の有効利用につながる重要な研究課題として注目されています。こうした背景の下、本研究グループは2023年に鉄(III)光触媒FeX*3を用いる立体選択的な反応を世界に先駆けて開発しました注3)。しかし、目的の反応を進行させるためには高価なキラル配位子X*を鉄(III)の3倍モル量用いる必要がありました。今回、本研究グループはX*と安価なアキラル注1)二座配位子Yを組み合わせた新たな触媒FeX*Yを開発することで、X*の使用量を先行研究の1/3に削減することに成功しました。さらに、開発した触媒を用いた選択的な6員環形成反応を鍵反応に利用することで、呼吸バースト阻害剤としての応用が期待される(+)-Heitziamide(ハイツイアミド) Aの世界初となる不斉全合成を達成しました。本研究は、豊富な資源である「鉄」とクリーンなエネルギーである「光」を掛け合わせた合成法の開発であり、科学技術の持続可能な発展につながります。
本研究成果は、2026年1月8日付米国化学会誌「Journal of the American Chemical Society」のオンライン版に掲載されました。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

 

【用語説明】

注1)キラル・アキラル・不斉全合成:
右手と左手のように、鏡写しの関係にありつつもそれぞれを重ね合わせることができない性質をキラルという。それに対して、鏡写しのもの同士を重ね合わせることができる性質をアキラルという。また、キラルな天然物の合成において、鏡写しの関係にある二つの化合物の中からどちらか一方を選択的に合成することを不斉全合成という。
注2)配位子:
金属に結合する部位の総称。
注3)先行研究:
Ohmura, S.; Katagiri, K.; Kato, H.; Horibe, T.; Miyakawa, S.; Hasegawa, J.; Ishihara, K. J. Am. Chem. Soc. 2023, 145, 15054–15060.
DOI: 10.1021/jacs.3c04010

 

【論文情報】

雑誌名:Journal of the American Chemical Society(米国化学会誌)
論文タイトル:A Rational Design of Chiral Iron(III) Complexes for Photocatalytic Asymmetric Radical Cation (4 + 2) Cycloadditions and the Total Synthesis of (+)-Heitziamide A
著者:赤尾 颯斗(博士後期課程学生)、大村 修平(助教)、石原 一彰(教授)
DOI: 10.1021/jacs.5c20243
URL: https://pubs.acs.org/doi/10.1021/jacs.5c20243

 

【研究代表者】

大学院工学研究科 石原 一彰 教授
http://www.ishihara-lab.net/