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工学

2026.01.22

次世代半導体MoS2の革新的ウエハースケール成膜技術を開発 ――結晶成長の自己整合および自己停止メカニズムにより高移動度を達成――

【ポイント】

・MOCVD法を用いて、サファイア基板上のMoS2結晶粒が自己整合して単結晶化する革新的な成長メカニズムを発見。
・独自のプリカーサ選択により、成膜反応が単層厚さで自動停止する新たな現象を見いだし、2インチサイズのウエハー全体にわたって均一で再現性の高い単層MoS2膜を実現。
・2つの成膜メカニズムの相乗効果により高い電子移動度を達成。量産化を見据えたウエハースケールで高品質な単層MoS2単結晶膜の形成という産業界からの要請に応えるとともに、次世代サブ1 nmノード論理トランジスタ実現に向けた重要な一歩。

 

物質・材料研究機構(NIMS)の佐久間 芳樹 NIMS特別研究員と東京大学大学院工学系研究科マテリアル工学専攻の長汐 晃輔 教授らの研究グループは、名古屋大学未来材料・システム研究所の五十嵐 信行教授、筑波大学、東京エレクトロン テクノロジーソリューションズ(株)との共同研究により、有機金属化学気相成長法(MOCVD、注1)を用いた単層膜厚の二硫化モリブデン(MoS2)の成長に関して、サファイア基板上でのMoS2結晶粒の自己整合的な合体と成長膜厚の自己停止という2つの重要な成膜メカニズムを発見しました。これらのメカニズムを利用することで、単層MoS2単結晶膜をウエハースケールで再現性高くエピタキシャル成長(注2)させることが可能となりました。また、電子移動度の温度依存性から、本手法によるMoS2は欠陥密度が少なく高品質であることが実証されました。
本成果は、ウエハースケールで高品質かつ均一な二次元半導体(2D半導体)の単結晶薄膜を安定して製造できる道を切り開いたものであり、将来の大規模集積回路や低消費電力エレクトロニクス、さらには光電子デバイス応用においても大きな意義を持ちます。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【用語説明】

(注1)有機金属化学気相成長法(MOCVD法)
半導体や酸化物などの薄膜を形成するための成長技術の1つ。金属元素を含む有機化合物(前駆体)と反応性ガスを高温基板上に供給し、化学反応によって結晶を成長させる手法です。分子レベルで供給量や反応条件を制御できるため、膜厚や組成の均一性に優れ、現在の半導体産業(LED、レーザーダイオード、パワーデバイスなど)でも広く用いられています。

 

(注2)エピタキシャル成長
薄膜結晶成長技術の1つで、単結晶の基板上に原子や分子を積み重ね、基板や下地層の結晶構造を維持したまま新たな結晶層を形成する手法です。この技術により、欠陥の少ない高品質な薄膜を製造できるため、半導体デバイスの性能向上に不可欠な工程です。本研究では、MoS2とサファイア基板の間のファンデルワールス力(分子間力)を利用した、より先進的なエピタキシャル技術を使っています。

 

【論文情報】

雑誌名:Nature Communications
題 名:Self-aligned and self-limiting van der Waals epitaxy of monolayer MoS2 for scalable 2D electronics
著者名:Yoshiki Sakuma*, Keisuke Atsumi, Takanobu Hiroto, Jun Nara, Akihiro Ohtake, Yuki Ono, Takashi Matsumoto, Yukihiro Muta, Kai Takeda, Emi Kano, Toshiki Yasuno, Xu Yang, Nobuyuki Ikarashi, Asato Suzuki, Michio Ikezawa, Shuhong Li, Tomonori Nishimura, Kaito Kanahashi, Kosuke Nagashio*
DOI:10.1038/s41467-026-68320-8
URL:https://www.doi.org/10.1038/s41467-026-68320-8

 

【研究代表者】

未来材料・システム研究所 五十嵐 信行 教授
https://www.imass.nagoya-u.ac.jp/interview_ikarashi/