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生物学

2026.02.12

動物の複雑な行動を解析するAIツール『YORU』を発表~プログラム不要で集団内の個体の行動識別や操作が可能に~

【ポイント】

・動物同士が入り交じる場面でも、「見た目の変化」を手がかりに高速で動物の行動を自動検出するAI解析ツール『YORU』を開発した。
・昆虫、魚、哺乳類において複数個体の行動を高い精度で迅速に検出できた。
・特定の行動を示す個体をピンポイントで狙ったリアルタイム介入操作注1)を実現した。
・プログラミング不要で実験・解析を自動化でき、生命科学全般の研究発展にも寄与する。

 

〈AI解説ツール「YORU」による解析動画〉

 

名古屋大学大学院理学研究科の山ノ内 勇斗 博士後期課程学生、田中 良弥 講師、上川内 あづさ 教授、同大学大学院創薬科学研究科 竹内 遼介 助教らの研究グループは、AIを使った動物行動解析ツール 『YORU』 を開発しました
動物の行動の仕組みを研究するためには、さまざまな行動を個別に解析・定量することが欠かせません。YORUは、機械学習のアルゴリズムの一つである物体検出注2)を応用し、従来のツールでは困難だった交尾やグルーミングなどの複雑な動きを伴う行動解析に加え、複数個体が同時に相互作用する社会性行動も正確・迅速に解析することを可能としました。さらに、リアルタイム解析機能を投影光学系と組み合わせることで、特定の行動を示した個体をピンポイントで狙って、その神経のはたらきを操作することに成功しました。
 YORUはプログラミング不要でAIによる行動解析を行えるよう設計しているため、Arduino などのマイクロコントローラを介して既存の実験系にシームレスに組み込み可能です。また、オープンソースソフトウェアとして公開し、AGPL-3.0 ライセンスの下でユーザーが自由に改変・利用できるようにしました。本ツールにより、従来は科学的な解析や定量化が困難だった動物行動の原理を効率的に研究できるようになります。
本研究の成果は、神経科学・動物行動学にとどまらず、生態学やスポーツ科学など「行動」が関連する広範な研究分野の加速的発展に寄与すると期待されます。
本研究成果は2026年2月12日午前4時(日本時間)、国際科学雑誌『Science Advances』に掲載されました。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【用語説明】

注1)介入操作:
動物が示す行動や、その発現確率・タイミングを、外部からの刺激や操作によって人為的に変化させること。具体的には、光刺激(光遺伝学)、温度刺激(熱遺伝学)などの外来エフェクター因子を介した方法や、匂い刺激、電気刺激、薬理学的操作、報酬・罰などを用いる方法がある。これらの手法により、特定の行動を誘発・抑制したり、行動選択パターンを変化させたりすることができる。行動介入を実験に組み込むことで、単なる行動観察だけでは分かりにくい因果関係、すなわち、「どの神経活動や感覚入力が行動を引き起こすか」を検証することが可能となる。
注2)物体検出:
機械学習を用いて、画像や動画の中に写っている物体(例:人、車、犬など)の、種類と位置を同時に解析する手法。本研究では、物体検出を動物の行動解析に用いることで、行動の検出を実現した。

 

【論文情報】

雑誌名: Science Advances
論文タイトル:YORU: animal behavior detection with object-based approach for real-time closed-loop feedback
著者:山ノ内勇斗†‡、竹内遼介†、千葉直也、橋本浩一、清水貴史、小坂田文隆、田中良弥‡、上川内あづさ‡ (†共同筆頭著者;‡共同責任著者; ※ 名古屋大学関係者)
DOI: 10.1126/sciadv.adw2109                                       
URL: https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.adw2109

 

 

【研究代表者】

大学院理学研究科/トランスフォーマティブ生命分子研究所 上川内 あづさ 教授
https://www.bio.nagoya-u.ac.jp/~NC_home/index2.htm