・セ・リーグでのDH制導入を見据えた統計分析
日本プロ野球の10年分の実データをもとに、「指名打者制度(Designated Hitter, DH)注1)」が勝敗に与える影響を検証。
・DH制度の「意外な影響」:勝利への貢献構造は不変
個人の能力(WAR注2))がチームの勝利に結びつく割合は、DH制度があってもなくても、ほとんど変わらないことが判明。DH制度は、日本プロ野球での「勝つための本質的なチームバランス」を崩すものではないことを示唆。
・セ・リーグでのDH制導入(2027年導入予定)や高校野球でのDH制導入などを科学的に考える手がかりに
DH導入の影響を客観的に評価するためのデータ的エビデンスを提示。
名古屋大学大学院情報学研究科の清水 詩乃(博士前期課程2年)と鈴木 泰博 准教授の研究グループは、日本プロ野球の過去10年間のデータを使い、「指名打者(DH)がいても・いなくても、チームの勝ち方は本質的に変わらない」ことを明らかにしました。
DH(指名打者)は、投手の代わりに打撃だけを担当する選手で、パ・リーグで採用されています。一方セ・リーグにはDH制度がなく、両リーグの違いとしてしばしば話題になります。特に「DH制度がチーム構造・強さに影響する」との見方は根強くあります。
この研究では、試合に出場したすべての選手がどれだけチームの勝利に貢献したかを分析し、DHがいる場合・いない場合の違いを統計的に比較しました。その結果、たとえDHの選手が活躍したとしても、チームの勝ち方そのものが特別に変わることはなかったことが判明しました。
つまり、DHの有無にかかわらず、勝敗に強く関わる選手が多いチームほど、安定して勝ち続けているという傾向がみられました。DHが打っても打たなくても、チームの勝敗を左右していたのは、試合に深く関与する選手の数と質でした。
従来の分析方法では、DHは一塁手や外野手の延長として扱われることが多く、DHとして明確に区別されていませんでした。そこで本研究では、DHを明確に切り分けた上で、どのような選手が勝利に関与するのかを分析しこの結果を得ました。
本研究は、DH制度の導入や拡大が議論される中で、制度変更の影響を感覚や印象ではなく、実際の試合データに基づいて冷静に評価するための根拠を提供するものです。
本研究成果は、2026年1月30日付の学術誌『PLoS One』に掲載されました。
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注1)指名打者(DH:Designated Hitter)制度:
ピッチャーの代わりに打撃専門の選手を起用する制度。守備にはつかず、打席だけに立つ。アメリカのメジャーリーグでは1973年に導入され、日本では1975年からパ・リーグのみで採用。
注2)WAR(Wins Above Replacement):
「代替可能選手(Replacement Player)」と比べて、どれだけ多くの勝利をチームにもたらしたかを示す総合評価指標。打撃・守備・走塁・投球などの要素を統合し、選手の貢献度を数値化する。
雑誌名:PLoS One
論文タイトル:Statistical analysis of winning percentages in Japanese professional baseball using the Wins above Replacement indicator
著者:Shino Shimizu, Yasuhiro Suzuki
DOI: 10.1371/journal.pone.0336297
URL: https://doi.org/10.1371/journal.pone.0336297
大学院情報学研究科 鈴木 泰博 准教授, 主著者;清水 詩乃(博士前期課程学生)
https://ysuzuki-lab.info