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農学

2026.03.18

有用な酵素を世界最小・最速で開発する新技術 食品・医薬・エネルギー分野への酵素利用拡大に期待

【ポイント】

・酵素注1)活性を指標とした世界最小スケールかつ最速の酵素開発技術を発明。
・酵素とその遺伝情報(mRNA)1分子複合体を形成させ、活性ある酵素分子をその
遺伝子とともに取得可能。
・環境負荷の低い酵素プロセスや、バイオセンサーなどの有用酵素開発を加速。

 

酵素は食品や洗剤をはじめ、医薬品や化学製品、燃料などの製造に多く使われており、環境負荷の低い触媒としてその利用範囲は世界的に増大しています。名古屋大学大学院生命農学研究科のDAMNJANOVIC Jasmina(ダムナニョヴィッチ ヤスミナ) 准教授、中野 秀雄 教授、MUNAWEERA Kalhari(ムナウィーラ カルハリ)博士後期課程学生、CAMAGNA Maurizio(カマーニャ マウリツィオ)博士、伊藤 智和 准教授らの研究グループは、東京科学大学 総合研究院 化学生命科学研究所の北口 哲也 准教授、朱 博(シュ ハク) 助教、埼玉大学大学院理工学研究科の根本 直人 特任教授との共同研究で、産業的に有用な酵素の1分子スクリーニングを可能にする新規な酵素選択システムSMART法を開発しました。
このシステムの特徴は設計図(mRNA)と製品(酵素・タンパク質)、さらにこの標的酵素反応に応じて目印をつけるヘルパー酵素を1分子レベルでセットにすることです。通常、酵素などタンパク質を作ると設計図から離れてしまいますが、この技術では「設計図」と「製品」を強力な糊でくっつけたままにします。そのため、膨大な標的酵素変異体のうち、活性を有する標的酵素分子が含まれる複合体だけにヘルパー酵素の作用により目印がつけられることで、その遺伝子までもが一緒に“釣れる”のです。同様の技術はこれまで特定の分子に結合するペプチドや抗体で開発され、実用化されていました。本研究では酵素、しかも産業用有用な酵素酸化還元反応を行う酵素に対して、その酵素活性を指標とした世界最小で最速の「酵素分子選択システム」を世界で初めて開発しました。
本研究成果により、産業的に「優れた性質をもつ有用酵素」が従来の手法より短時間・低コストで開発可能になると期待されます。このヘルパー酵素は、さまざまな産業用酵素に応用可能であり、食品、医薬、診断薬さらには、化学産業における酵素利用を拡大することが期待されます。
本研究成果は、雑誌『ACS Synthetic Biology』のASAPに2026年2月23日にオンライン公開されました。正式版は4月に掲載予定です。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【用語説明】

注1)酵素:
遺伝子の配列に従ってつくられるタンパク質分子のうち、化学反応を触媒する分子の総称。食品、医薬品、洗剤など多方面で実用化されている。

 

【論文情報】

雑誌名:ACS Synthetic Biology
論文タイトル:Harnessing the Power of SMART Single-Molecule Display for Enzyme Evolution: A Focus on Oxidase.
著者:Munaweera, T. I. K.1, Odake N.1, Halim, H. 1, Ikeda, K.1, Zhu, B.2, Camagna, M1., Ito, T. 1, Kitaguchi, T.2, Nemoto, N.3, Nakano, H.1*., Damnjanović, J.1*
1.名古屋大学
2.東京科学大学
3.埼玉大学
DOI:10.1021/acssynbio.5c00968
URL: https://doi.org/10.1021/acssynbio.5c00968

 

【研究代表者】

大学院生命農学研究科 DAMNJANOVIC Jasmina(ダムナニョヴィッチ・ヤスミナ)准教授, 中野 秀雄 教授, 主著者:MUNAWEERA Kalhari(ムナウィーラ・カルハリ)博士後期課程学生 
https://molbiotech.wixsite.com/molbiotech