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社会科学

2026.03.31

性的マイノリティに「みんなは否定的」は思い込み?―実は多い「肯定派」。可視化でカミングアウトしやすい社会に―

【ポイント】

・カミングアウト注1)は心の健康に寄与するとされるが、日本では依然としてハードルが高い。
・本研究では、シスジェンダーかつ異性愛者の日本人を対象に、性的マイノリティおよびカミングアウトに対する態度を調査した。
・参加者全体の平均としては、性的マイノリティに対して肯定的な態度が示された。
・しかし、人々は「自分よりも世間一般の方が否定的である」と推定する傾向が確認された。
・こうした認識が、当事者によるカミングアウトを支える行動を弱める可能性が示唆された。
・理解者が多いという事実の共有が、カミングアウトしやすい社会につながる可能性がある。

 

名古屋大学大学院情報学研究科の孟 憲巍(もう けんい)准教授と水野 佑佳 博士前期課程学生は、性的マイノリティ当事者注2)に対して、実際よりも世の中は冷たいと多くの人が思い込んでおり、そのことが当事者のカミングアウトへの支援を弱めている可能性を示しました。
性的マイノリティ当事者にとって、性自認や性的指向を隠して生活することは精神的健康の悪化につながる一方、カミングアウトが受け入れられれば心理的幸福感の向上が期待されます。しかし日本では、「カミングアウトできない」と感じる当事者の割合が高く、その背景にある心理・社会的要因の解明が課題となっていました。
本研究の結果、多くの人は自分自身を性的マイノリティに対して理解ある存在だと捉えている一方で、世間一般は自分よりも否定的であると推定していることが明らかになりました。さらに、この認識が、当事者のカミングアウトを積極的に支援する姿勢を弱めている可能性が示されました。実際には理解者が多いという事実を共有することが、当事者が安心してカミングアウトできる社会づくりにつながる可能性が示唆されました。本研究は、職場や学校での環境整備やメディア報道のあり方を考える上でも重要な示唆を与えます。
本研究成果は、アメリカ心理学会(APA)刊行の国際査読誌『Psychology of Sexual Orientation and Gender Diversity』に、2026年3月30日(現地時間)付で掲載されました。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【用語説明】

注1)カミングアウト:
性的マイノリティ当事者が、自分の性自認や性的指向などについて、自発的に他者に打ち明けることを指す。
注2)性的マイノリティ当事者:
性自認(自分をどの性別(ジェンダー)と認識しているか)や性的指向(どの性別の人を好きになるか)が、社会において少数派にあたる人々を指す言葉。一般に、社会の多数派であるシスジェンダー(生まれた時の性別と性自認が一致する人)と異性愛者以外の人たちのことを指す。レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーなどが含まれる。

 

【論文情報】

雑誌名:Psychology of Sexual Orientation and Gender Diversity
論文タイトル:Misperceived Public Attitudes Undermine Support for Sexual and Gender Identity Disclosure in Japan
著者:Yuka Mizuno and Xianwei Meng (名古屋大学)
DOI: 10.1037/sgd0000911

URL: https://psycnet.apa.org/doi/10.1037/sgd0000911

 

【研究代表者】

大学院情報学研究科 孟 憲巍 准教授, 主著者:水野 佑佳(博士前期課程学生
https://www.mengxlab.com/