・全国レジストリ(J-MACSレジストリ*1)の1,458例を解析し、補助人工心臓(LVAD*2)植込み後3か月時点のフレイル*3状態がその後の死亡および出血・血栓塞栓症などの血液関連合併症、右心不全と関連することを明らかにしました。
・年齢、術前のフレイル状態、心不全の重症度、手術時間の延長などが、LVAD植込み後のフレイルの程度と関連していました。
・LVAD植込み後のフレイル評価は、長期的な有害事象のリスクが高い患者を早期に識別するための有用な指標となる可能性が示されました。
名古屋大学医学部附属病院循環器内科/重症心不全治療センター病院助教 風間信吾、同病院講師 近藤徹、同大学大学院医学系研究科循環器内科学教授 室原豊明、心臓外科学教授 六鹿雅登らの研究グループは、重症心不全に対して植込型補助人工心臓(LVAD:Left Ventricular Assist Device)の植込みを行った患者におけるフレイル(虚弱)状態と長期予後の関連を、全国レジストリデータを用いて解析しました。
心不全は、心臓のポンプ機能が低下して全身に十分な血液を送れなくなる病態で、進行すると生命に関わります。LVADは重症心不全患者に適応され、生命予後を改善するだけでなく、心臓移植までの橋渡しとしての役割も担う治療です。近年はデバイスの進歩により成績が向上していますが、死亡や合併症のリスクはなお高く、植込み後の長期管理が重要です。
一方、フレイルは、身体機能の低下や慢性疾患による消耗、栄養障害などにより生体の予備力が低下し、健康障害が起こりやすくなった状態を指します。一般的な心不全患者ではフレイルが予後と関連すると報告されていますが、LVAD植込み後患者におけるフレイルと長期予後の関係は十分に明らかではありませんでした。
本研究では、日本の補助人工心臓レジストリ(J-MACS)に登録された1,458例を対象に、LVAD植込み後3か月時点のフレイル状態をFrailty indexで評価しました。その結果、フレイルが強い患者ほどその後の死亡や重篤な合併症のリスクが高いことが明らかになりました。これらの結果は、LVAD植込み後の患者管理において、フレイル評価が有害事象の重要なリスク指標となる可能性を示しています。
本研究成果は、2026年3月13日付で国際学術誌「Journal of Cardiac Failure」にオンライン先行公開されました。
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*1 J-MACS: Japanese registry for Mechanically Assisted Circulatory Supportの略で日本の補助人工心臓市販後レジストリのこと。補助人工心臓に関連する8学会・2研究会、企業、PMDAが共同で実施しており、植込型補助人工心臓の機器の性能を把握し、重症心不全患者の臨床評価、臨床管理、QOLの向上など広く役立てることや、補助人工心臓のリスクとベネフィットを明らかにし、適切な安全対策の実施を推進、信頼性の高い次世代補助人工心臓の開発に貢献することを目的としている。
*2 LVAD: Left ventricular assist deviceの略で、左室補助人工心臓のこと。重症心不全で機能が低下した左心室の代わりに血液を全身に送るポンプ装置
*3 フレイル: 心身の活力(筋力、認知機能、社会とのつながりなど)が低下した「虚弱」な状態。
雑誌名:Journal of Cardiac Failure
論文タイトル:Impact of frailty on mortality and adverse events after durable left ventricular assist device implantation: Insights from the J-MACS registry
著者:風間信吾 近藤徹 今泉貴広 長井伸 野崎飛鳥 米山将太郎 水野智章 伊藤亮太 平岩宏章 森本竜太 林泰成 吉住朋 Jawad H. Butt 齋木佳克 新浪博士 小野 稔 室原豊明 六鹿雅登
DOI: 10.1016/j.cardfail.2026.02.051
URL: https://doi.org/10.1016/j.cardfail.2026.02.051