TOP   >   数物系科学   >   記事詳細

数物系科学

2026.04.30

噴火に至らなかった2024-2025年冬の御嶽山活動期にも噴火時と同様の流体圧変化が起きていた~地震活動から流体挙動を読み解く~

【ポイント】

・2024年12月~2025年1月に御嶽山の活動が活発化した際、1月21日の火山性微動発生前後で、火山性地震注1)の断層運動タイプ(メカニズム解注2))が急激に変化したことを捉えた。
・この変化は、2014年の噴火前後に観測された特徴的な変化と類似していた。
・観測された地震のメカニズム解の時間変化を基に、地下の熱水循環システムの形成と、火山性流体の圧力上昇に伴う応力変動を説明する概念モデルを提示した。
・今回は噴火には至らなかったものの、地下では噴火準備過程に関連する可能性のある火山性流体の活動が進行していた可能性を示唆している。

 

名古屋大学大学院環境学研究科附属地震火山研究センターの寺川 寿子 教授(兼 東京大学地震研究所附属地震火山研究連携センター 教授)らの研究グループは、2024年12月~2025年1月に御嶽山の活動が活発化した際の火山構造性地震注1)のメカニズム解注2)を分析し、1月21日の火山性微動発生前後で、メカニズム解が大きく変化したことを明らかにしました。この変化は、2014年の噴火時に観測されたパターンとよく似ていました。この結果は、今回の噴火に至らなかった活動でも、地下で噴火時と類似の物理過程が進行していた可能性を示します。
火山構造性地震は、火山の地下の局所的な応力場注3)を反映して発生します。局所応力場は、プレート運動によって長期間かけて形成される広域的な応力場と、火山性流体の圧力変化等に伴う短期的な応力変化との重ね合わせで表現されます。地震のメカニズム解は地震発生時の応力状態を示すデータであり、従来は応力場の推定に用いられてきました。本研究では、火山構造性地震のメカニズム解の時間変化を手掛かりに、地下で進行する火山性流体の活動を応力変化として捉える方法を提示しました。
具体的には、熱水循環システムの発達に伴う応力変化の概念モデルを提案し、多様なメカニズム解を示す地震の発生を統一的に説明しました。このように、応力変化を火山性流体の圧力と結びつける視点は、本研究の独創的な特徴です。今回の御嶽山の活動は噴火には至らなかったものの、地下では噴火時と同様な火山性流体の圧力上昇とその後の減圧過程が進行していた可能性を示しています。
本研究成果は、2026年4月27日18時付Nature Portfolioの学術誌『Communications Earth and Environment』に掲載されました。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【用語説明】

注1)火山性地震/火山構造性地震:
プレート運動によって生じる応力が原因で発生する一般的な地震(断層運動)と区別して、火山活動に関係して火山付近で発生する地震を火山性地震と呼ぶ。火山性地震の中で、一般的な地震と同様に断層運動によって地震波が励起される地震を火山構造性地震と呼ぶ。
注2)地震のメカニズム解:
地震時の断層運動の様式を示す情報で、一般的に、断層面の向き(走向、傾斜角)と相対すべり運動の方向(すべり角)で特徴づけられる。相対すべりの方向は、断層の上側のブロック(上盤)の下側のブロック(下盤)に対するすべりベクトルの向きとして走向方向から反時計回りに測る。
注3)応力場:
応力は力の状態を示す物理量であり、数学的には2階の実対称テンソルであり、3×3の対称行列で表現される。この行列の3つの固有値は主応力とよばれ、固有ベクトルの方向は互いに直交する。地球の内部の応力状態は圧縮状態にあり、3つの圧縮力で特徴づけられる。これらは、慣例で、圧縮の大きいほうから、最大、中間、最小主応力とよばれる。主にプレート運動によって長期間かけて形成される応力場を広域応力場とよぶ。御嶽山周辺域の広域応力場は、最大主応力と最小主応力の向きは、西北西ー東南東と北北東ー南南西方向にある。

 

【論文情報】

雑誌名:Communications Earth and Environment
論文タイトル:Volcano-tectonic earthquake focal mechanisms reveal fluid-induced stress changes driving hydrothermal system development at Mount Ontake
著者: 寺川寿子(名古屋大学大学院環境学研究科)、前田裕太(名古屋大学大学院環境学研究科)、堀川信一郎(名古屋大学全学技術センター)
DOI:10.1038/s43247-026-03463-6 
URL:https://www.nature.com/articles/s43247-026-03463-6

 

【研究代表者】

大学院環境学研究科附属地震火山研究センター 寺川 寿子 教授
https://www.seis.nagoya-u.ac.jp