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医歯薬学

2026.04.08

超高感度次世代シーケンスで若年性骨髄単球性白血病の「微小クローン」を可視化~見逃されてきた遺伝子変異が予後不良と強く関連~

 【ポイント】

・若年性骨髄単球性白血病(JMML)は、乳幼児に発症する治療が難しい希少な白血病です。

・本研究では、高感度な新しい解析技術を用いて、従来の検査では十分捉えきれなかった、微細な遺伝子変異を、網羅的に検出しました。

・その結果、診断時にごく一部の白血病細胞にしか存在しない遺伝子変異であっても、患者さんの病気の進行や治療成績に大きく影響することが分かりました。

・本研究の成果は、JMMLの重症度をより正確に見極め、治療方針を決める新たな手がかりになると期待されます。

 

名古屋大学大学院医学系研究科小児科学の髙橋 義行 教授、村松 秀城 准教授、佐治木 大知 助教らの研究グループは、エラー修正次世代シーケンス*1と呼ばれる超高感度の遺伝子解析技術を用いて、若年性骨髄単球性白血病(juvenile myelomonocytic leukemia:JMML)の遺伝子異常を詳細に解析し、複数の遺伝子変異を持つ白血病細胞がわずかでもあると、病気の進行や治療成績と密接に関連していることを明らかにしました。
JMMLは主に乳幼児期に発症する、まれで治療が難しい白血病です。およそ90%の患者では、細胞の分化や増殖を制御するRAS経路に関わる5つの遺伝子(PTPN11、NF1、NRAS、KRAS、CBL)のいずれかに変異が認められます。さらに一部の症例ではSETBP1JAK3など「セカンドヒット*2」と呼ばれる遺伝子異常が、白血病細胞の増殖や病気の進展に関与することが分かっていました。
エラー修正次世代シーケンスは、解析の過程で生じるエラーを分子バーコードを用いて補正することで、従来の次世代シーケンサーでは区別が難しかった低頻度の遺伝子変異を高い精度で検出できる技術です。この手法により、白血病細胞集団の中で一部の細胞のみが持つ遺伝子異常も、網羅的かつ定量的に解析することが可能となりました。
本研究では、JMML患者104人を対象にエラー修正次世代シーケンス解析を行い、合計159個の遺伝子変異を同定しました。そのうち30個(19%)は、白血病細胞集団の中で一部のJMML細胞のみに認められる低頻度の変異(マイナークローン変異*3)でした。
解析の結果、セカンドヒットの遺伝子変異を持つ患者では、それが白血病細胞の一部にのみ認められるマイナークローン変異であっても、治療成績が良くないことが分かりました。さらに、治療後に再発した一部の症例では、実際に再発と診断される数か月前から、こうした微小な遺伝子変異を捉えることが可能でした。
今回の研究成果により、JMMLにおいて重要性が示唆されてきた白血病細胞内の遺伝子異常を、これまで以上に高精度かつ網羅的に評価することが可能となり、診断時の正確なリスク評価や治療戦略の最適化につながることが期待されます。
本研究成果は、2026年4月7日付(日本時間4月7日9時)英国科学誌より発行されている科学誌『Leukemia』に掲載されました。

 

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【用語説明】

*1) エラー修正次世代シーケンス:遺伝子解析の過程で生じる読み取りエラーを分子バーコードにより補正することで、従来の次世代シーケンサーでは正確な検出が難しかった低頻度の遺伝子変異も、高い精度で検出できる遺伝子解析技術。
*2) セカンドヒット:白血病の発症に関わる主要な遺伝子変異に加えて、病気の進行や悪化に関与すると考えられる追加の遺伝子変異。
*3) マイナークローン変異:白血病細胞集団の中で、一部の細胞のみに存在する遺伝子変異。診断時には少数しか存在しないが、病気の進行や治療成績に影響することがある。

 

【論文情報】

雑誌名:Leukemia
論文タイトル:Error-corrected Next-generation Sequencing for Profiling the Subclonal Genetic Architecture of Juvenile Myelomonocytic Leukemia
著者:Daichi Sajiki1, Hideki Muramatsu1†, Manabu Wakamatsu1, Yusuke Tsumura1, 2, Daiki Yamashita1, Ayako Yamamori1, Kotaro Narita1, Shinsuke Kataoka1, and Yoshiyuki Takahashi1†

1Department of Pediatrics, Nagoya University Graduate School of Medicine, Nagoya, Japan
2Division of Cancer Evolution, National Cancer Center Research Institute, Tokyo, Japan

Co-corresponding authors.

DOI: 10.1038/s41375-026-02922-5

URL: https://doi.org/10.1038/s41375-026-02922-5

 

【研究代表者】

大学院医学系研究科小児科学 村松 秀城 准教授
https://nagoya-u-ped.jp/