・限られた現生生物のみを手本とする従来の生物模倣技術注1)と異なり、「ありうる」植物種の微細構造を生成する手法を提案した。
・より優れた機能構造を生成するために、現生種にはない新しい特徴を持つ「ありうる」植物種の葉表面の微細構造を生成した。
・「ありうる」植物種の生成には、現生種データよりも多様な新規構造を生成する必要があり、学習データには現生種データに加え性質の異なるチューリング・パターンを加えた。
・異なる性質を持つ二つのデータ群から、安定して学習・生成する新たな生成アプローチを開発し、現生植物にはない特徴を持つ「ありうる」植物の微細構造の生成に成功した。
・本手法の応用により、撥水性や付着性、流体抵抗低減など機能に応じた構造の逆設計への展開が期待される。
名古屋大学大学院工学研究科の星野 隆行 教授の研究グループは、深層生成モデル注2)を用いて「ありうる」植物種の微細構造を生成する新たな深層生成手法を開発し、現生種にはない特徴を持つ「ありうる」植物の新規構造を生成することに成功しました。
本研究では、異なる性質を持つパターンに対して安定した学習・生成を実現するために、ノイズ除去拡散確率モデルにおける「交互デノイズ」という生成アルゴリズムを開発しました。この手法を用いて、反応拡散モデル注3)によって生成される構造と現生植物の葉の表面構造を訓練データとして組み込み、現生植物にはない特徴を持った新たな表面構造データを生成することに成功しました。この技術を応用することで、現生種だけでなく過去にあり得た絶滅種の形質や未来に存在しうる派生種の形質を手本とする新しい生物模倣技術に発展し、より有用な構造を発見する技術として期待されます。
本研究成果は、2026年4月28日付の学術雑誌『Japanese Journal of Applied Physics』電子版に掲載されました。
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注1) 生物模倣技術:
生物が進化の過程で獲得してきた構造などの形質が持つ優れた特性を模倣することで、複雑な逆問題を解くことなく工学的な問題を解決する手法のこと。植物の表面構造はこれまでに生物模倣技術で模倣されてきており、ハスの葉やバラの花の高撥水性がヨーグルトの蓋や太陽光パネルに応用されている。
注2) 深層生成モデル:
生成AIの核心技術であり、多層のニューラルネットワークを用いてデータセットを学習し、その背後にある潜在的な確率分布を捉えることで、学習した分布に基づいて新たなデータを生成するモデルの総称。代表的なモデルとして、変分オートエンコーダ(VAE)や敵対的生成ネットワーク(GAN)、ノイズ除去拡散確率モデル(DDPM)などが挙げられる。
注3) 反応拡散モデル:
空間に分布する複数の物質の濃度が、物質同士の局所的な化学反応と、空間内に広がる拡散という二つのプロセスによって時間的・空間的に変化する様子を数理的に表現したモデル。ゼブラフィッシュの縞模様や指紋など、生物表面に見られるパターン形成を説明するモデルとして知られている。
雑誌名: Japanese Journal of Applied Physics
論文タイトル: Expanding morphological diversity of plant surface microstructures using deep generative model and reaction-diffusion model for bioinspiration
著者: Tomoya Akimoto(名古屋大学) 、 Hisataka Maruyama (名古屋大学)、 Takayuki Hoshino(名古屋大学)
DOI:10.35848/1347-4065/ae5aad
URL:https://iopscience.iop.org/article/10.35848/1347-4065/ae5aad
大学院工学研究科 星野 隆行 教授, 主著者;秋本 智哉(博士前期課程学生)
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