TOP   >   化学   >   記事詳細

化学

2026.05.25

透明ナノシートで高感度・超小型光センサーを実現 宇宙・車載向け応用に期待、スマホカメラもさらに進化へ

【ポイント】

・ガリウム(Ga)をドープした酸化亜鉛(ZnO)注1)をベースとした透明導電体注2)ナノシート注3)を開発。
・ナノシートにより、従来材料の課題である高透明性と高感度可視光検出を同時実現。
・赤・緑・青(RGB)の色情報を1ピクセル内で識別可能な「オールインワンRGBフォトディテクタ注4)」を構築。
・400℃の高温環境下においても安定動作。
・宇宙、車載、高放射線環境などの極限環境で動作する次世代光デバイスへの応用。

 

名古屋大学未来材料・システム研究所のルベン・カントン-ビトリア 事業客員研究者(大阪大学 接合科学研究所 助教)、ビビッド・ミーラブ 博士前期課程学生、長田 実 教授らの研究グループは、ガリウム(Ga)ドープ酸化亜鉛(ZnO)をベースとした透明導電体ナノシートを用いることで、高透明性・高感度可視光検出・高耐熱性を同時に実現した高性能フォトディテクタの開発に成功しました。
光を電気信号へ変換するフォトディテクタは、IoT、光通信、監視カメラ、ナイトビジョン、生体イメージングなどを支える重要デバイスです。しかし従来技術では、検出波長域の制限に加え、毒性元素や希少金属の使用、高温プロセス・複雑な微細加工の必要性、高温環境での動作安定性の低さなどが課題となっていました。
今回、研究グループは、原子レベル厚さの二次元物質(ナノシート)に着目し、高透明性と優れた耐酸化性を有するZnOナノシートにGaドーピングを施すことで、電子状態を制御した透明導電性ナノシートを開発しました。その結果、毒性元素や希少金属を用いることなく、高透明性と高感度可視光検出を両立しました。さらに、室温溶液プロセスを用いて異なる波長域に応答する光フィルタを垂直積層することで、単一画素内で赤・緑・青(RGB)光を同時識別可能なオールインワンRGBフォトディテクタを実現しました。加えて、本デバイスは大気中400 ℃の高温環境下でも安定動作を維持し、優れた耐熱性・耐酸化性を示しました。
本成果は、「透明性」「高感度」「高耐熱性」を兼ね備えた革新的なフォトディテクタを実現するものであり、宇宙、車載、高放射線環境などの極限環境で動作する次世代光デバイスへの応用が期待されます。本研究成果は、2026年5月18日付米国化学会科学誌「ACS Nano」のオンライン速報版に掲載されました。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【用語説明】

注1)酸化亜鉛(ZnO):
約3.4 eVの広いバンドギャップを持つワイドギャップ半導体。優れた紫外線(UV)応答性と高い化学的安定性を有し、UVフォトディテクタに広く利用されている。
注2)透明導電体:
電気を通す性質と可視光を透過する透明性を兼ね備えた材料。ガラスやフィルムの表面に成膜して使用され、スマートフォンやPCのタッチパネル、液晶ディスプレイ、太陽電池などに不可欠な基幹材料として広く活用されている。代表的な材料に、ITO(インジウム・スズ酸化物)、FTO(フッ素ドープ酸化スズ)、AZO(アルミニウムドープ酸化亜鉛)、IGZO(インジウム・ガリウム・亜鉛酸化物)がある。
注3)ナノシート:
原子1層、数層からなる物質。代表する物質としては、グラフェン、六方晶BN、遷移金属カルコゲナイド(MoS2、WS2など)、酸化物ナノシートなどがある。
注4)オールインワンRGBフォトディテクタ:
単一の素子・単一画素内で赤(R)、緑(G)、青(B)の光を同時に識別・検出できる光検出デバイス。従来のようにRGBごとに異なるフィルタや複数の受光素子を必要とせず、小型化・高集積化・高解像度化を実現できる点が特徴。

 

【論文情報】

雑誌名:ACS Nano
論文タイトル:Highly Transparent Gallium-Doped Zinc Oxide Nanosheets Enabling Stable All-in-One Red-Green-Blue Photodetectors with High Responsivity
著者:Vivid Meelab(名古屋大学大学院工学研究科応用物質化学専攻・修士課程2年)
Ruben Canton-Vitoria(名古屋大学未来材料・システム研究所・研究員、大阪大学接合科学研究所・助教)*責任著者
Mohammad Furqan(サラゴサ大学・博士研究員)
森田佳典(研究当時、名古屋大学大学院工学研究科応用物質化学専攻・修士課程2年)
森田 秀(名古屋大学未来材料・システム研究所・特任助教)
山本瑛祐(名古屋大学未来材料・システム研究所・助教)
小林 亮(名古屋大学未来材料・システム研究所・准教授)
Raul Arenal(サラゴサ大学・教授)
長田 実*(名古屋大学未来材料・システム研究所・教授)*責任著者 

       

DOI: 10.1021/acsnano.6c04352
URL: https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acsnano.6c04352

 

【研究代表者】

未来材料・システム研究所 長田 実 教授
https://mosada-lab-nagoya.com