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社会科学

2026.05.13

不確かな状況への不安は、"感情を言葉にしようとする傾向"とも関連 ― 自閉傾向が高い一般成人にみられた「言語化のジレンマ」―

【ポイント】

・自閉傾向注1)が高い人は、不確かな状況で不安を感じやすい。
・一方で、自分の気持ちを言葉にすることに困難を抱えやすい。
・本研究では、不確実さ不耐性注2)が「感情を言語化しようとする傾向」と関連することが示された。
・支援においては、「言語化の困難さ」だけでなく「言語化しようとする傾向」や、その背後にある動機づけの可能性にも注目することが重要である。

 

名古屋大学大学院情報学研究科の藤井亮孝博士後期課程学生と平井真洋准教授は、20〜39歳の日本の一般成人505人を対象とした質問紙調査により、自閉傾向が高い人では、気持ちを言葉にすることに関わる自己報告上の難しさがみられる一方で、不確実な状況への不安・不快感の強さ、すなわち不確実さ不耐性が、気持ちを言葉にして整理しようとする傾向とも関連する可能性を示しました。
気持ちを言葉にすることは、不安の整理や軽減に関連することが知られています。本研究の結果は、自閉傾向が高い人において、「言葉にしにくい」という困難さと、「言葉にしようとする」という傾向やその背後にある動機づけの可能性が同時に存在することを示しています。
この知見は、感情教育や心理支援の場において、「言葉にしにくい」という困難さだけでなく、その背後にある「言葉にしようとする」という側面にも注目することの重要性を示すものです。
一方で、本研究は一般成人を対象とした横断的な質問紙調査に基づくものであり、因果関係の解釈には慎重さが求められます。また、ASD(自閉スペクトラム症)注3)の診断を受けた人にそのまま当てはめる際には、さらなる検討が必要です。
本研究成果は、2026年5月12日(日本時間18:00)付の学術雑誌『Scientific Reports』に掲載されました。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【用語説明】

注1)自閉傾向:
ASD(自閉スペクトラム症)の中核的特徴とされる「社会的コミュニケーション、および対人的相互作用の困難さ」および「制限された興味や活動、常同行動」は、一般人口においても連続的に分布していると考えられている。このような特性の個人差の程度を「自閉傾向」と呼ぶ。これらの特性が発達早期から持続し、一定の診断基準を満たし、日常生活に支障をきたしている場合にASD(注3)と診断される。本研究では、このような連続的特性の個人差を測定するために、心理尺度である自閉スペクトラム指数(AQ)を用いた。
注2)不確実さ不耐性:
不確実な状況や予期せぬ出来事に対して、認知・感情・行動レベルで否定的に反応する気質的特徴のことを指す。不安症状の中核的な要因と考えられている。
注3)ASD(自閉スペクトラム症):
神経発達症の一つであり、DSM-5では、社会的コミュニケーションおよび対人相互作用における困難さ、ならびに行動・興味または活動の限定された反復的な様式などの特徴が持続的にみられ、日常生活に支障をきたしている場合に診断される。

 

【論文情報】

雑誌名:Scientific Reports
論文タイトル:Autism related traits and anxiety in the general population are linked through intolerance of uncertainty and affect labeling
著者:Akitaka Fujii & Masahiro Hirai        
DOI: 10.1038/s41598-026-47237-8

URL: https://doi.org/10.1038/s41598-026-47237-8

 

【研究代表者】

大学院情報学研究科 平井 真洋 准教授,主著者;藤井 亮孝(博士後期課程学生)
https://www.hirailab.cog.i.nagoya-u.ac.jp/