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医歯薬学

2026.05.13

単一の蛍光体微粒子で陽子マイクロビームを可視化~マイクロメートル精度で線量分布を直接評価する新手法~

【ポイント】

・単一の蛍光体微粒子注1)を用いて陽子マイクロビーム注2)の空間線量分布を可視化。
・マイクロメートルスケールでの高分解能プロファイル測定に成功。
・従来困難であった局所線量構造の直接評価を実現。

 

名古屋大学大学院医学系研究科 総合保健学専攻の余語 克紀 助教の研究グループは、同大学院工学研究科、量子科学技術研究開発機構(QST)、広島大学、早稲田大学、東北大学などとの共同研究で、単一の蛍光体(シンチレータ)微粒子を用いて、陽子マイクロビームの空間線量分布を高分解能で可視化する新しい手法を開発しました
本研究では、放射線が蛍光体に当たった際に生じる微弱な光を、個々の粒子レベルで検出することにより、従来の測定で避けられなかった「1画素内での平均化」を超え、検出器の画素サイズに制限されない空間分解能での評価を実現しました。これにより、細胞1個と同程度のマイクロメートルスケールにおける線量分布を直接的に捉えることが可能となりました。さらに、横方向プロファイル測定により、ビーム幅約2 µmの微細な構造を高精度に再現できることを示し、単一粒子レベルでの発光情報からビーム形状を定量的に評価できることを実証しました。
本成果により、粒子線治療や放射線生物研究において重要となる微細な線量構造の理解が進み、細胞レベルでの応答評価や治療精度の向上への応用が期待されます。
本研究成果は、2026年4月23日(日本時間)付医学物理学雑誌『Physics in Medicine and Biology』に掲載されました。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【用語説明】

注1)蛍光体微粒子(シンチレータ微粒子):
放射線が当たると微弱な光を発する材料の粒子。本研究では、ZnS:Agという蛍光体の微小粒子を用いた。放射線計測の分野では、このような材料はシンチレータとも呼ばれる。

注2)陽子マイクロビーム:
直径が数マイクロメートル(本研究では約2 µm)程度にまで細く絞った陽子線のこと。細胞1個や、さらに小さい細胞核1個といった非常に限定された領域を狙って照射できるため、放射線が細胞に与える影響を高い空間分解能で調べる研究に用いられる。

 

【論文情報】

雑誌名:Physics in Medicine and Biology
論文タイトル:Proton microbeam characterization using a single-particle scintillator
著者:Katsunori Yogo, Ryu Okada, Tatsuya Kameyama, Kazutaka Akiyoshi, Tsukasa Torimoto, Masao Yoshino, Hiroshi Yasuda, Seiichi Yamamoto, Daisuke Ohsawa
(本学関係教員;余語克紀,岡田龍, 亀山達矢,秋吉一孝,鳥本司)
DOI:10.1088/1361-6560/ae63a1

URL:https://doi.org/10.1088/1361-6560/ae63a1

 

【研究代表者】

大学院医学系研究科 総合保健学専攻 余語 克紀 助教
https://researchmap.jp/read0206310