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医歯薬学

2026.06.18

心原性ショックを合併した急性心筋梗塞では「患者の病院到着から心臓を休ませるまでの速さ」が予後と関連~小型軸流式ポンプ留置までの時間が新たな診療指標となる可能性~

【ポイント】

・小型軸流式ポンプ (microaxial flow pump: mAFP)による治療を受けた心原性ショック合併ST上昇型心筋梗塞 1,783例の全国レジストリ解析において、病院到着からmAFP留置までの時間 (Door-to-unload time)が短いほど、院内死亡率が低いことと関連していました。
・Door-to-unload timeの遅れは、高齢、臓器障害、mAFP留置前の大動脈内バルーンパンピングまたは体外式膜型人工肺の使用、mAFP留置前の経皮的冠動脈インターベンション、およびmAFP症例数の少ない施設での治療と関連していました。
・Door-to-unload timeは、実臨床で活用可能な診療プロセス指標となり得ることが示され、心原性ショックを認識した後は、病院到着から90分以内のmAFP留置が現実的な目標となる可能性があります。

 

名古屋大学大学院医学系研究科循環器内科学の長井伸 大学院生、同大学医学部附属病院重症心不全治療センターの近藤徹 病院講師、同大学大学院医学系研究科心臓外科学の六鹿雅登 教授、同大学大学院医学系研究科循環器内科学の室原豊明 名誉教授(現:国立長寿医療研究センター)らの研究グループは、心原性ショックを合併したST上昇型心筋梗塞において、病院到着から小型軸流式ポンプ(microaxial flow pump: mAFP)を留置するまでの時間が短いほど、院内死亡率が低いことと関連することを、全国レジストリのデータを用いて明らかにしました。

 

ST上昇型心筋梗塞は、心臓に酸素や栄養を送る冠動脈が突然閉塞する重篤な病気です。その約10%では、心臓が全身に十分な血液を送り出せなくなる心原性ショックを合併し、死亡率は30〜50%に達するとされています。これまで、病院到着から閉塞した冠動脈を再開通させるカテーテル治療までの時間、いわゆるDoor-to-balloon timeの短縮が重視されてきました。しかし、心原性ショックを合併した症例では依然として死亡率が高く、新たな治療戦略が求められていました。

 

mAFPは、脚の付け根などの血管から挿入し、弱った心臓のポンプ機能を一時的に補助する医療機器です。本邦では2017年から臨床使用が可能となり、近年、心原性ショックを合併したST上昇型心筋梗塞に対する有効性が報告されています。一方で、病院到着からmAFPを留置するまでの時間、すなわちDoor-to-unload timeと予後との関連は十分に明らかではありませんでした。

 

本研究では、全国レジストリに登録された1,783人の患者データを解析しました。その結果、Door-to-unload timeが短いほど、院内死亡率が低いことと関連していました。特に、病院到着後60分以内にmAFPを留置された患者群と比べて、150分以降に留置された患者群では、院内死亡率が約15%高いことが示されました。これらの結果は、心原性ショックを合併したST上昇型心筋梗塞において、Door-to-unload timeが診療の質を評価し改善するためのプロセス指標となる可能性を示しています。

本研究成果は、2026年6月15日付で国際学術誌「EuroIntervention」に掲載されました。

 

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【論文情報】

雑誌名: EuroIntervention
論文タイトル: Door-to-Unload Time and Mortality in Patients with ST-Segment Elevation Myocardial Infarction complicated by Cardiogenic Shock
著者:
Shin Nagai, MD,1 Toru Kondo, MD, PhD;1 Shingo Kazama, MD, PhD;1 Asuka Nozaki, MD;1 Takahiro Imaizumi, MD, PhD;2,3 Shotaro Komeyama, MD;1 Chiaki Mizuno, MD;1 Ryota Ito, MD, PhD;1 Hiroaki Hiraiwa, MD, PhD;1 Ryota Morimoto, MD, PhD;1 Yasunari Hayashi, MD, PhD;4 Tomo Yoshizumi, MD, PhD;4 Masato Mutsuga, MD, PhD;4 Toyoaki Murohara, MD, PhD1, J-PVAD investigators
所属:
1.Department of Cardiology, Nagoya University Graduate School of Medicine, Nagoya, Japan
2.Department of Advanced Medicine, Nagoya University Hospital, Nagoya, Japan
3.Department of Clinical Research Education, Nagoya University Graduate School of Medicine, Nagoya, Japan
4.Department of Cardiac Surgery, Nagoya University Graduate School of Medicine, Nagoya, Japan

DOI:10.4244/EIJ-D-25-01369

URL:https://doi.org/10.4244/EIJ-D-25-01369

 

【研究代表者】

医学部附属病院 重症心不全治療センター 近藤 徹 病院講師

https://www.med-nagoya-junnai.jp/