・ポリアミン注1)は細胞の増殖や機能維持に重要な役割を果たすアミノ酸由来の代謝物である。
・本研究では、ポリアミン合成の律速酵素注2)であるオルニチン脱炭酸酵素(ODC)注3)の活性を、放射性同位体を用いずに測定する新たな技術を開発した。
・安定同位体注4)標識基質と質量分析を活用することで、高精度かつ簡便にODC活性を測定することが可能となった。
・本技術は、成長、老化、健康維持と深く関わるポリアミン代謝の研究のさらなる発展に資する新たな解析基盤となることが期待される。
名古屋大学大学院生命農学研究科の古川 恭平 助教、村井 篤嗣 教授、塩見 友万博士後期課程学生、名古屋大学全学技術センター 設備・機器共用推進室の髙濵 謙太朗 室長らの研究グループは、ポリアミン合成の律速酵素であるオルニチン脱炭酸酵素(ODC)の新たな活性測定法を開発しました。
これまでODC活性の測定には、放射性同位体を用いる手法が広く利用されてきました。しかし、この手法では放射性物質の取り扱いに関する専門技術や専用施設が必要となるほか、廃棄物の厳格な管理も求められるため、利用できる研究環境が限られるという課題がありました。
そこで本研究では、放射性同位体の代わりに安定同位体で標識したオルニチンを基質として用い、酵素反応によって生成した安定同位体標識プトレシンを液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)で定量するODC活性測定法を開発しました。本手法により、ODC活性を高感度かつ高精度に測定することが可能となりました。さらに、培養細胞から動物組織まで幅広い生体試料に適用可能であることも実証しました。本研究成果は、従来の測定手法が抱えている技術的制約を解消するものであり、老化や疾病との関連が注目されるポリアミン研究のさらなる発展に貢献することが期待されます。
本研究成果は、2026年6月21日(日本時間)付Springer Nature雑誌『Amino Acids』に掲載されました。
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注1)ポリアミン:
構造内にアミノ基を二つ以上持つ化合物の総称で、代表的なポリアミンはプトレシン、スペルミジン、およびスペルミンである。ポリアミンは動物、植物、微生物を問わず生体内において普遍的に存在している。生体へのポリアミン供給は食事由来供給、およびアミノ酸からの体内合成供給の2種類に大別される。
注2)律速酵素:
ある特定の代謝経路において、その反応全体の進行速度を最も強く制御している酵素。
注3)オルニチン脱炭酸酵素(ODC):
オルニチンをプトレシンに変換する反応を担う酵素。アミノ酸からのポリアミン合成の律速反応を担い、哺乳類ではその活性が高度に調節されている。
注4)安定同位体:
同じ元素でありながら中性子の数が異なるために質量が異なる物質。生命科学研究では、安定同位体で標識した物質を用いて、代謝経路の追跡や物質の新規合成量の定量などが行われている。
雑誌名:Amino Acids
論文タイトル:LC-MS assay for quantifying ornithine decarboxylase activity in the biological matrix and cultured cells using stable isotope‑labeled ornithine
著者:Yuma Shiomi, Naoya Ogawa, Kentaro Takahama, Atsushi Murai and Kyohei Furukawa すべて名古屋大学
DOI: 10.1007/s00726-026-03539-9
URL: https://doi.org/10.1007/s00726-026-03539-9
大学院生命農学研究科 古川 恭平 助教,主著者;塩見 友万(博士後期課程学生)
https://anutr.agr.nagoya-u.ac.jp/