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医歯薬学

2026.08.20

高送達・低毒性の次世代RNA創薬技術を開発 ~独自環状RNAを効率的に送達するLNPで糖尿病などの慢性疾患治療へ~

【ポイント】

・体内で壊れにくい独自の「キャップ化環状RNA(Cap-cirRNA)注1)」と、それを細胞へ効率よく届ける新しい運び屋「FL0445脂質ナノ粒子(LNP)注2)」を開発。
・独自の「分岐型(枝分かれ)構造」を持つイオン化脂質でLNPを最適化し、臨床で使われる製剤を超える送達効率(モデルで10倍以上)と、低い炎症=高い安全性を両立。
・世界的に注目される“肥満症治療薬・糖尿病薬”の元になるホルモン「GLP-1注3)」を環状RNAに載せて肥満マウスに投与。直鎖mRNAを上回る持続的な発現と、優れた血糖コントロール作用を確認。
・一度の投与で長く効く、より安全な次世代RNA医薬の基盤技術であり、糖尿病をはじめとする慢性疾患に対する画期的な新薬創出への貢献が期待される。

 

名古屋大学大学院理学研究科の阿部 洋 教授、同大学学際統合物質科学研究機構(IRCCS)の木村 誠悟 特任助教らの研究グループは、富士フイルム株式会社(以下富士フイルム)との共同研究により、体内で壊れにくい独自の「環状RNA(Cap-cirRNA)」を安全かつ効率的に細胞内へ届ける次世代の送達プラットフォーム「FL0445-LNP」を開発しました。新型コロナワクチンなどで使われる「直鎖mRNA」は体内で数時間〜数日で分解されますが、輪の形をした環状RNAは分解されにくく、効果が長持ちします。一方で、その硬い構造ゆえに細胞内へ届けるのが難しいという課題がありました。研究グループは、富士フイルムの新規脂質「FL0445」の枝分かれ構造が粒子内部にほどよい柔軟性を生むと考え、この課題を解決。最適化したFL0445-LNPは、臨床模倣製剤に比べて10倍以上高い遺伝子導入活性を示し、さらに炎症反応が有意に低い(副作用が少ない)ことも確認しました。そして、近年“肥満症治療薬・糖尿病薬”として世界的に知られるホルモン「GLP-1」の設計図を環状RNAに載せて肥満マウスに投与したところ、体内でGLP-1が持続的につくられ、従来の直鎖mRNA製剤を上回る優れた血糖コントロール作用を示すことに成功しました。本成果は、副作用を抑えつつ効果を長く持続させる「次世代RNA治療薬」の基盤技術として、糖尿病をはじめとする慢性疾患治療への貢献が期待されます
本研究成果は、2026年8月20日午前0時(日本時間)付でCell Pressが発行する科学誌『Cell Biomaterials』に掲載されました。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【用語説明】

注1)環状RNA(cirRNA)、キャップ化環状RNA(Cap-cirRNA):
末端がない環状の構造のRNA。通常の直鎖状RNAよりも分解されにくく、体内で長くタンパク質を作り続けることができる。環状RNAにキャップ構造を導入し、タンパク質産生能を向上させた当研究室独自開発のものを「キャップ化環状RNA(Cap-cirRNA)」と呼ぶ。
関連プレスリリース(2025年2月20日):
https://www.nagoya-u.ac.jp/researchinfo/result/2025/02/mrna-icit.html
注2)脂質ナノ粒子(LNP):
核酸を保護して細胞内に届けるためのナノサイズの脂質カプセル。mRNAワクチンの基幹技術。
注3)GLP-1(ジーエルピーワン):
食後にインスリンの分泌を促して血糖値を下げるホルモン。近年、糖尿病や肥満の治療薬の主要な標的として世界的に注目されている。

 

【論文情報】

雑誌名: Cell Biomaterials
論文タイトル: A branched ionizable lipid nanoparticle platform for versatile in vivo delivery of nucleic acids: Validation from mRNA to capped circular RNA
著者: 木村誠悟*, 堤進, 中村直人, 辻畑茂朝, Lyu Fangjie, 中嶋裕子, 喜多俊介,
前仲勝実, 橋谷文貴, 稲垣雅仁, 阿部奈保子, 木村康明, 阿部洋* (*は責任著者、下線は本学関係者)
DOI: 10.1016/j.celbio.2026.100555

URL: https://doi.org/10.1016/j.celbio.2026.100555

 

【研究代表者】

大学院理学研究科 阿部 洋 教授
https://biochemistry.chem.nagoya-u.ac.jp/