・従来の呼吸数や深さでは見えない「1回の呼吸の中身」を、新たな呼吸評価軸として提示。
・一つのセンサで呼吸に伴う圧力と温度の変化を捉え、応答の速さと信号の向きの違いを活用して、吸気と呼気の切り替え直後の「過渡相注1)」およびその後に生じる「準定常相注2)」の分離・可視化に成功。
・慢性閉塞性肺疾患注3)・喘息患者群では、吸気の準定常成分が低下する一方、呼気の過渡成分が増加する特徴的な連動傾向を見出し、日常モニタリングへの応用に期待。
名古屋大学大学院情報学研究科の張 賀東(チャン フートン)教授、宋 玉璽(ソン ユシ)助教、李 旻玉(リ ミンギョク)博士後期課程学生、青山 純 博士前期課程学生らの研究グループは、名古屋大学未来材料・システム研究所の内山 知実 教授、社会医療法人宏潤会 大同病院の吉川 公章 名誉理事長、中央大学の真野 俊樹 教授との共同研究により、呼吸数や深さだけでは見えない「1回の呼吸の中身」を捉える呼吸モニタリング技術を開発しました。一つの柔軟PZT注4)センサで呼吸に伴う圧力と温度の変化の両方を捉え、かつ応答の速さと信号の向きの違いを利用することで、吸気と呼気の切り替えの直後に気流速度が大きく変化する過渡相と、それに続く気流速度が比較的安定する準定常相を一つの波形上で分離・可視化することに成功しました。
健常者および慢性閉塞性肺疾患・喘息患者を対象としたパイロット測定では、呼吸周期や振幅では健常者と患者の範囲が重なった一方、過渡相と準定常相の割合では、群間の違いがより明瞭に現れました。特に患者群では、吸気の準定常成分が低下する一方、呼気の過渡成分が増加し、両者が連動して変化する傾向を見出しました。本技術は、呼吸評価の新しい軸を提示し、日常的な呼吸状態モニタリングへの応用が期待されます。
本研究は、2026年5月28日付で科学雑誌『Advanced Healthcare Materials』オンライン版に公開されました。
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注1)過渡相:
吸気と呼気の切り替え直後に、気流速度が大きく変化する時間領域。
注2)準定常相:
過渡相に続き、気流速度が比較的安定している時間領域。
注3)慢性閉塞性肺疾患(COPD):
肺の空気の通りが悪くなり、息切れなどを引き起こす進行性の慢性呼吸器疾患。日本で40歳以上の約12人に1人、約530万人が患者と推定されている。症状の悪化を防ぐため、早期発見と継続的な状態把握が重要である。
注4)PZT(チタン酸ジルコン酸鉛):
変形や温度変化に応じて電気信号を生じる材料。本研究では、呼吸気流に伴う微小な圧力変化によっても変形しやすいよう、柔軟なマイカ基板上にPZT薄膜を形成したフレキシブルセンサを用いた。
雑誌名:Advanced Healthcare Materials
論文タイトル:Portable Breathing Monitoring With Phase-Resolved Airflow Dynamics Enabled by a Dual-Response Flexible PZT Sensor
著者:李旻玉(名古屋大学)、青山純(名古屋大学)、呉宇超(名古屋大学)、内山知実(名古屋大学)、吉川公章(大同病院)、真野俊樹(中央大学)、宋玉璽(名古屋大学)、張賀東(名古屋大学、責任著者)
DOI:10.1002/adhm.71282
URL:https://doi.org/10.1002/adhm.71282
大学院情報学研究科 張 賀東 教授, 主著者;李 旻玉 博士後期課程学生
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