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生物学

2026.09.11

AIで魚の「バランス喪失」を自動検出 温度への強さを客観的に測る新システムを開発~メダカとその近縁種で系統・種による温度耐性の違いを明らかに~

【ポイント】

・魚が高温・低温にさらされた際に体のバランスを失う瞬間(平衡感覚喪失(LOE: Loss of Equilibrium)注1))を、AI技術を用いて自動的かつ客観的に検出するシステムを開発し、これまで人によって判定がぶれやすかった評価を、熟練した研究者と同等の精度で行えることを示した。
・同システムを用いてメダカの複数の系統や近縁種を比較したところ、系統や種によって温度耐性が異なることが分かった。
・今後、本システムを用いた詳細な解析により、温度耐性の分子機構の解明や、気候変動が魚類に与える影響の予測への貢献が期待される。

 

名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所(WPI-ITbM)の中山 友哉 特任講師、松尾 佳哉 氏(研究当時 博士前期課程学生)らの研究グループは、福井大学の長谷川 達人 准教授、加藤 拓也 氏(研究当時 博士前期課程学生)らとの共同研究で、動物の姿勢を動画から自動で捉える技術「DeepLabCut注2)」と画像分類のAI技術を組み合わせることで、魚が温度ストレスによって平衡感覚を失う瞬間を自動的かつ客観的に検出するシステムを開発しました。このシステムを用いてメダカの複数の系統や近縁種の温度耐性を調べたところ、系統間で温度耐性に差があり、近縁種間では、高緯度に生息する種ほど寒さに強く、日本のメダカが最も高い耐寒性を示すことが分かりました。一方、2025年に新種記載された台湾産近縁種は緯度から予想される以上の耐寒性を示し、緯度以外の要因も温度適応に関わっている可能性が示されました。今後、本システムを用いてメダカの系統や近縁種を対象とした詳細な解析を進めることで、温度耐性の背景にある分子機構の解明や、気候変動が魚類に与える影響の予測への貢献が期待されます。
本研究成果は、2026年9月10日18時(日本時間)付で国際学術雑誌『Scientific Reports』に掲載されました。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【用語説明】

注1)平衡感覚喪失(LOE: Loss of Equilibrium):
魚が温度などの環境ストレスによって姿勢を維持できなくなり、体の平衡を失う現象。魚類の温度耐性を評価する指標として一般的に用いられており、本研究ではこの瞬間を動画から自動検出する技術を開発した。
注2)DeepLabCut:
動物の姿勢や動きを動画から自動的に追跡・解析するオープンソースの機械学習ツール。深層学習を用いて、マーカーなどを付けずに動物の体の各部位(キーポイント)の位置を高精度に検出できる。世界中の動物行動研究で広く利用されている。

 

【論文情報】

雑誌名:Scientific Reports
論文タイトル:DeepLabCut-based automated system reveals diverse temperature tolerance among medaka strains and related Oryzias species
(DeepLabCutを用いた自動評価システムによるメダカ系統およびメダカ近縁種の多様な温度耐性の解明)
著者:Yoshiya Matsuo, Takuya Kato, Kiyoshi Naruse, Takashi Yoshimura, Tatsuhito Hasegawa, Tomoya Nakayama
(松尾 佳哉1、加藤 拓也2、成瀬 清3、吉村 崇1、長谷川 達人2、中山 友哉1
1:名古屋大学 2:福井大学 3:基礎生物学研究所
DOI:10.1038/s41598-026-66712-w

URL:https://doi.org/10.1038/s41598-026-66712-w

 

※【WPI-ITbMについて】(http://www.itbm.nagoya-u.ac.jp
名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所(ITbM)は、2012年に文部科学省の世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)の1つとして採択されました。
ITbMでは、精緻にデザインされた機能をもつ分子(化合物)を用いて、これまで明らかにされていなかった生命機能の解明を目指すと共に、化学者と生物学者が隣り合わせになって融合研究をおこなうミックス・ラボ、ミックス・オフィスで化学と生物学の融合領域研究を展開しています。「ミックス」をキーワードに、人々の思考、生活、行動を劇的に変えるトランスフォーマティブ分子の発見と開発をおこない、社会が直面する環境問題、食料問題、医療技術の発展といったさまざまな課題に取り組んでいます。これまで10年間の取り組みが高く評価され、世界トップレベルの極めて高い研究水準と優れた研究環境にある研究拠点「WPIアカデミー」のメンバーに認定されました。

 

【研究代表者】

トランスフォーマティブ生命分子研究所/大学院生命農学研究科 中山 友哉  特任講師
https://www.agr.nagoya-u.ac.jp/~aphysiol/